役人と企業に富、人民には飢えを 中国×ベネズエラ事業「負の遺産」
習氏が出席した式典が行われた当時、チャベス氏はPDVSAを、石油に関係ない事業を多数含む開発プロジェクトの拠点にしていた。PDVSAアグリコーラと呼ばれる部門が新設され、食糧増産に取り組んだ。
事業多角化により、PDVSAには、各種契約や、ベネズエラの開発銀行が管理する資金が集まるようになった。2010年までに、中国国家開発銀行(CDB)から320億ドル、チャベス氏が創立したインフラ整備ファンドから60億ドルが、ベネズエラの開発銀に振り込まれている。
サラザル氏は、強いコネを持つコンサルタントとして、ベネズエラでのビジネスを仲介するため、中国の企業幹部に近づいていった。毎月のように中国に出張し、CAMCなどの企業との橋渡しを頼むため、現地のベネズエラ当局者に金銭を支払い始めた。
「私の仕事は、会議や出張、プロモーションを通じて、契約に署名するよう説得することだった」と、サラザル氏はアンドラ当局の捜査官に述べている。
サラザル氏はアンドラ当局の事情聴取に対し、BPAをオフショア銀行として利用したのは、他の裕福なベネズエラ人が利用していたのを知っていたためだと述べた。ピレネー山脈の静かな谷間に位置するBPAは、高リスク国の顧客の資金を管理する機密性の高い金融機関として知られていた。
アンドラ当局がベネズエラ政府に情報照会を行ったことを受け、ベネズエラの裁判所は2017年、汚職やマネーロンダリングなどの容疑でサラザル氏を逮捕するよう命じた。
サラザル氏のアンドラでの弁護士はロイターへのメールで、中国当局が資金の受け取り企業を決定しており、サラザル氏や仲介者に決定権はなかった、と述べた。
サラザル氏のコンサル会社は、「プロフェッショナル」で「テクニカル」なサービスを多くの中国企業に提供したが、「こうした企業で、実際に事業を受注できたのは、ほんの一握りだった」としている。
もう1人、サラザル氏を支援したと検察がみているのが、元ベネズエラの中国大使で、現在は英国大使を務めるロシオ・マネイロ氏だ。
マネイロ氏は、アンドラの捜査では起訴されていない。同氏の証言に関する検察の捜査書類も含めた様々な裁判所書類は、サラザル氏から受け取った資金や、同氏を中国企業に橋渡ししたことについて、マネイロ氏が「捜査対象だ」としている。
裁判所の書類に含まれていた銀行記録によると、サラザル氏は2010年、マネイロ氏名義の中国の銀行口座に「マネイロ氏が提供したサービス」の代金として3万ドルを送金している。
その後サラザル氏は、マネイロ氏の所有であることが照会書類で確認されたパナマ企業のBPA口座に、計1300万ドルを入金している。マネイロ氏は、弁護士などを通じ、サラザル氏を支援したことや、同氏から金銭を受け取ったことを否定した。