最新記事

健康

盲腸とったらパーキンソン病のリスクが高くなる? 昨年とは真逆の研究結果 

2019年5月15日(水)18時00分
松岡由希子

虫垂のCG画像 tussik13-iStock

<アメリカの6220万人以上の電子カルテを分析したところ、虫垂(盲腸)切除術を受けた人はパーキンソン病の発症リスクが高くなる、という。昨年にはまったく逆の研究結果が出されて話題になったところだが......>

虫垂(盲腸)切除術を受けた人はパーキンソン病の発症リスクが高くなる──。このような研究結果が、2019年5月20日に米サンディエゴで開催される国際会議「米国消化器病週間(DDW)」で発表される見通しとなった。しかし一方で、まったく正反対の研究結果が昨年発表されて話題になっていて、虫垂とパーキンソン病との関連について、ますます注目が集まりそうだ。

アメリカの患者6220万人以上の電子カルテを分析した

パーキンソン病の発症原因はいまだ完全に明らかになっていないが、αシヌクレインというたんぱく質の凝集がパーキンソン病の発症に関わっているとみられている。αシヌクレインはパーキンソン病の発症初期に消化管で見つかることから、パーキンソン病の発症リスクと虫垂を含む消化管との関連について解明がすすめられてきた。

米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のモハメド・シェリフ医師らの研究チームは、米国の26の医療システムから患者6220万人以上の電子カルテを分析し、虫垂切除術後6ヶ月以降にパーキンソン病と診断された患者を特定した。

虫垂切除術を受けた患者48万8190人のうちパーキンソン病を発症したのは0.92%にあたる4470人であった一方、虫垂切除術を受けていない約6171万人のうちパーキンソン病を発症したのは0.29%にあたる17万7230人であった。これによれば、虫垂切除術を受けた人がパーキンソン病を発症する割合は、そうでない人よりも約3倍高いことになる。

2018年10月には、真逆の研究結果が

虫垂とパーキンソン病との相関については、この研究結果も示されている。米ヴァンアンデル研究所の研究チームが2018年10月に発表した研究論文によると、患者160万人以上の電子カルテを分析した結果、パーキンソン病発症前に虫垂切除術を受けた人はパーキンソン病の発症リスクが低く、発症年齢も高かった。

2016年時点でのパーキンソン病の患者数は世界全体で610万人にのぼり、1990年時点の250万人に比べて増加している。

シェリフ医師は、虫垂とパーキンソン病との関連について研究したものとしては最大規模となる今回の研究結果について「虫垂もしくは虫垂切除術とパーキンソン病との間に明らかな関係は示されたが、これは相関にすぎない」とし、「さらなる研究によって両者の因果関係を明らかにするとともに、そのメカニズムについて解明する必要がある」と述べている。

虫垂とパーキンソン病の関係については、今後も研究成果を注視していく必要がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中