イラン核合意は存続できるか 欧州の「頼みの綱」は中国、インド
中国が頼みの綱
INSTEXを機能させるには、イランが国際的な不正防止基準を満たす「ミラーカンパニー」を設置する必要があるが、関係者によると準備は進んでいない。法律の制定も道半ばだし、イランの金融システムが透明性を欠いていることも障害だ。
米国が、イラン経済の一部を牛耳るイスラム革命防衛隊(IRGC)を制裁対象としたことも、事態をややこしくしている。前出の欧州外交筋によると、INSTEXを利用する国は、結果的にIRGC絡みの法人を利することのないよう、細心の注意を要する必要がある。
そこで欧州が「プランB」として望みを託すのが、中国とインドによるイラン産原油の購入だ。
中国は、米国による一方的な対イラン制裁に反対し、4月にはイラン産原油の輸入を増やした。外務省報道官は、核合意を完全に履行する必要があると述べているが、中国が合意を守るためにどのような行動を起こすかは定かでない。
一方、イラン産原油の輸入量で中国に次いで世界第2位のインドは、11月以来イラン産の輸入を半分に減らした。今のところ、インド高官らは他の供給先を探すと表明している。
EU高官らによると、インド政府はINSTEXへの参加に関心を示しているが、話し合いはまだ始まっておらず、実行可能かどうか疑問が残る。
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)の中東・北アフリカ・プログラムのシニア調査フェロー、サナム・バキル氏は「欧州は自分が出来ないことを中国とインドにやらせようとしており、無能ぶりをさらけ出している」と言う。
「欧州諸国が大局観を持って対応を考えているとは思えない。イラランに提供できるような、意味ある経済的選択肢が無いのは明らかだ」。
一方で欧州の外交官は「イランは欧州に一層の対応を迫っているが、それなら中国とロシアはどうだ。両国はあまり努力していない。中国は米国の制裁を恐れて、いくつかの分野でぐずぐずしている」とこぼした。
バキル氏は、英国、フランス、ドイツは核合意維持のため、関係諸国との高レベルの外交に焦点を絞るべきだと主張。「欧州3カ国が合意存続に向け、使命感を持って努力しなければ合意は崩壊する」と述べた。
(Robin Emmott記者、John Irish記者、Paul Carrel記者)
2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら