最新記事

中国軍事力

南シナ海に五星紅旗掲げる戦略原潜 中国が高める核報復力

2019年5月5日(日)11時30分

南シナ海に浮かぶ中国の海南島に世界の軍事情報機関の関心が集まっている。写真は2009年、青島沖で行われた中国軍創設60周年を祝賀する観艦式でお目見えした中国の原子力潜水艦。代表撮影(2019年 ロイター)

南シナ海に浮かぶ中国の海南島。トロピカルリゾートが広がる同島南岸に世界の軍事情報機関の関心が集まっている。風光明媚な三亜地区にある人民解放軍の海軍基地で、米国をにらんだ核抑止力の整備が着々と進んでいるからだ。

衛星画像を見ると、同基地には弾道ミサイルを搭載できる原子力潜水艦(戦略原潜)が常駐し、潜水艦を護衛する水上艦艇や戦闘機が沖合に見える。基地内には、弾道ミサイルを保管、積み込む場所とみられる施設もある。中国は海中から核攻撃ができるミサイル潜水艦部隊を保有し、米国などに対する核抑止のための哨戒活動を行なっている、と軍事関係者らは指摘する。

核を装備した潜水艦部隊の展開によって、中国は敵の先制核攻撃に核で報復する「第2撃能力」を着々と強化している。そして米国は、かつて冷戦時代に世界の海を潜航するソ連原潜を追いかけ回したように、いま中国の戦略原潜の動向に神経をとがらせつつある。

「核のトライアド」確立めざす

中国はおよそ60年をかけ、複雑で高度な潜水艦建造技術を習得し、米国、ロシア、英国、フランスの戦略原潜クラブに仲間入りした。米国防総省は、昨年8月に発表した中国の軍事動向に関する年次報告書で、中国がいまや「実行可能な」海洋配備型の核抑止力を有するとの、これまでで最も明確な評価を下した。

戦略原潜の配備は、中国核戦力の劇的な向上を象徴する。国防総省によると、4隻の「晋(ジン)級」戦略原潜は核弾頭を装填した弾道ミサイルを最大12発搭載でき、その推定射程は米国を圏内に収める7200キロメートルに達する。

総合的な核戦力を比較すると、中国はまだ米ロよりはるかに劣勢にある。中国側は実戦配備している核弾頭の数を明らかにしていないが、ストックホルム国際平和研究所が2018年に公表した報告書によると、中国が保有する核弾頭数は280発。これに対し、米国は1750発、ロシアは1600発の核弾頭を実戦配備し、保有数はその数の約3倍にのぼる。

しかし、国家主席、習近平が率いる「強軍戦略」の下、中国は主要核保有国のなかで唯一、核弾頭を増やし、空中発射型弾道ミサイルのほか、核兵器が搭載可能な長距離ステルス戦略爆撃機の開発も計画している。海中からの第2撃能力の整備と合わせ、中国は最終的には米国やロシアのような空、海、陸における核戦力のトライアド(核の三本柱)態勢の構築を狙っているとみられている。 

関連グラフィックス:原子力潜水艦の保有国と潜水艦発射型弾道ミサイル
(クリックで別ウインドウで表示します)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中