南シナ海に五星紅旗掲げる戦略原潜 中国が高める核報復力
米国を射程に捉える軍事的要衝
関連グラフィックス:周辺海域の水深
(クリックで別ウインドウで表示します)
海南島南岸は、核兵力の増強と展開にとって重要な戦略拠点だ。中国を取り巻く水域の中で、黄海は浅すぎるため、大型の弾道ミサイル搭載型の潜水艦を隠すには適さない。東シナ海は十分な深さがあるものの、朝鮮半島、日本列島、台湾に囲まれている上、米国と日本が最新鋭の対潜水艦兵器を配備して警戒を続けている。
一方、南シナ海は広さも深さも潜水艦の隠密行動には適している、と専門家は指摘する。フィリピン東方の太平洋に核装備の潜水艦を展開すれば、米国をミサイルの射程に捉えることができる。それを狙う中国にとって、海南島南部は軍事的な要衝であり、それゆえに、南シナ海の制海権は何としても手放すことはできない。
ただ、中国の核戦力を長期にわたり分析している研究者の中には、同海軍基地から戦略原潜が哨戒活動に出ているかどうか、疑問視する指摘もある。
米国科学者連盟の核情報プロジェクト責任者、ハンス・クリステンセンは、中国海軍の活動が活発化しているとしても、弾道ミサイルを搭載した潜水艦を展開させたと確認できる情報はまだ得られていない、と話す。
米国防総省も、中国が核抑止力を大幅に強化したことは認めるが、中国の潜水艦が24時間体制で警戒監視を行っているとはみていない。同省国防情報局 (DIA)は今年1月、中国海軍が海上で持続的な核抑止力を維持するためには、現在4隻ある晋級戦略原潜が少なくとも5隻必要だと指摘した。
潜水艦技術もなお遅れが否めない。中国は、1950年代後半から核ミサイル搭載潜水艦の建造に取り組んできたが、1980年代に進水した最初の一隻は敵に探知される「音(静粛性)」に問題があり、就役できずに終わった。核抑止に必要な第2撃能力を最大化するためには、哨戒中に探知されないような機能や構造が求められる。
米国をはじめとする外国の海軍専門家は、晋級戦略原潜は、それまでの潜水艦に比べて飛躍的に進歩したが、米国、ロシア、フランス、英国の潜水艦に比べると、依然ステルス性が低いと指摘する。