最新記事

中国軍事力

南シナ海に五星紅旗掲げる戦略原潜 中国が高める核報復力

2019年5月5日(日)11時30分

米国を射程に捉える軍事的要衝

関連グラフィックス:周辺海域の水深
(クリックで別ウインドウで表示します)

海南島南岸は、核兵力の増強と展開にとって重要な戦略拠点だ。中国を取り巻く水域の中で、黄海は浅すぎるため、大型の弾道ミサイル搭載型の潜水艦を隠すには適さない。東シナ海は十分な深さがあるものの、朝鮮半島、日本列島、台湾に囲まれている上、米国と日本が最新鋭の対潜水艦兵器を配備して警戒を続けている。

一方、南シナ海は広さも深さも潜水艦の隠密行動には適している、と専門家は指摘する。フィリピン東方の太平洋に核装備の潜水艦を展開すれば、米国をミサイルの射程に捉えることができる。それを狙う中国にとって、海南島南部は軍事的な要衝であり、それゆえに、南シナ海の制海権は何としても手放すことはできない。

ただ、中国の核戦力を長期にわたり分析している研究者の中には、同海軍基地から戦略原潜が哨戒活動に出ているかどうか、疑問視する指摘もある。

米国科学者連盟の核情報プロジェクト責任者、ハンス・クリステンセンは、中国海軍の活動が活発化しているとしても、弾道ミサイルを搭載した潜水艦を展開させたと確認できる情報はまだ得られていない、と話す。

米国防総省も、中国が核抑止力を大幅に強化したことは認めるが、中国の潜水艦が24時間体制で警戒監視を行っているとはみていない。同省国防情報局 (DIA)は今年1月、中国海軍が海上で持続的な核抑止力を維持するためには、現在4隻ある晋級戦略原潜が少なくとも5隻必要だと指摘した。 

潜水艦技術もなお遅れが否めない。中国は、1950年代後半から核ミサイル搭載潜水艦の建造に取り組んできたが、1980年代に進水した最初の一隻は敵に探知される「音(静粛性)」に問題があり、就役できずに終わった。核抑止に必要な第2撃能力を最大化するためには、哨戒中に探知されないような機能や構造が求められる。

米国をはじめとする外国の海軍専門家は、晋級戦略原潜は、それまでの潜水艦に比べて飛躍的に進歩したが、米国、ロシア、フランス、英国の潜水艦に比べると、依然ステルス性が低いと指摘する。

関連グラフィックス:晋(ジン)級潜水艦
(クリックで別ウインドウで表示します)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-印タタ新工場でiPhone生産開始、フォック

ワールド

北朝鮮、新型駆逐艦の兵器システム発射試験を実施=K

ビジネス

中国4月製造業PMIは49.0に低下、3カ月ぶり5

ビジネス

商船三井の今期、純利益6割減予想 米関税と円高織り
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中