ポンペオの「Huaweiは嘘つき」発言を検証する
Huaweiが中国政府に服従した場合、何が起きるか?
「中国には国家情報法があるから政府の要求に応じないということなど、出来るはずがないだろう」という疑念を抱くのはもっともなことだ。
多くの日本人も「あの一党支配体制の中国共産党に抵抗できることなど、あり得るはずがないだろう!」と、きっと誰もが思っているにちがいない。実際、ほとんどすべての講演で類似の質問を受けるので、それは日本人にとっても根深い、そして「正当な」疑問であることだと理解している。
そこで、その疑問にお答えしよう。
たしかに中国には国家情報法があり、その第7条には「いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人及び組織を保護する」という条項がある。
もともと国家情報法は、「中国人の中に民主化を求めて政府転覆を図る者があちこちに潜んでいるので、そういう反政府分子を匿ってはならない」、つまり「密告せよ」ということが目的である。中国は1940年代の国民党と共産党との間の国共内戦の時代から、互いに騙し騙されあいながら、スパイを通して政権の争奪戦を展開してきたので、中華人民共和国誕生後も、ともかく反政府分子摘発のための密告文化が根深く、根深く、蔓延している国家だ。
この中で翻弄されてきた者でないと、この密告文化は理解できないかもしれないが、習近平政権に至っても「人民の声」が怖くてならない。だから徹底した監視社会を構築してきた。
これが「国家情報法」の基本ではあるが、仮に、海外の感覚で「国家情報法」を解釈し、Huaweiが中国政府に屈服したとしよう。
そのとき、何が起きるか――?
まずHuawei社員の燃えるような使命感はその瞬間に消失する。新しい半導体チップを命を賭けて設計していくぞというような意欲は無くなり、普通の国有企業の従業員のように、やる気が無くなり、真に意欲を持つ者はHuaweiから去って、もっと小さな民間企業に移るだろう。
つまり、この時点で中国は5Gにおいて世界の最先端から脱落し、ハイテク国家戦略「中国製造2025」の完成も絵に描いた餅になってしまうということである。
この構図が面白いのだ!
習近平国家主席は、このことに激しく苦悩しているだろう。
ここにこそ「中国の特色ある社会主義国家」の限界があることに気が付かなければならない。