最新記事

ファーウェイ

ポンペオの「Huaweiは嘘つき」発言を検証する

2019年5月25日(土)19時00分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

このように、ポンペオは記者(アンドリュー)の「証拠を出せるのか?」という質問に対しては回答せず、「リスクを伴う」とのみ言っているので、シドロモドロとなってしまい、your informationを二度も言ったり、最後の文章"They may not use it tomorrow."を、どうやら言い間違えているように思われる。この個所は思うに"They may use it tomorrow."(明日は利用しているかもしれない)と言いたかったのではないだろうか。"not"が余分に入ってしまった。そうでないと、文脈上おかしい。

あるいは原文のまま"They may not use it tomorrow."だとすると、その次に「しかし、将来は、いつかは利用するかもしれない」と付け加えようとしたが、そのような不確定な未来予測でHuawei製品の使用禁止をしていると思われるのはまずいので、その言葉を呑みこんでしまったのかもしれない。

いずれにせよ、アンドリューの「証拠を出せるのか?」という質問に答えていないので、アンドリューは続けてポンペオに迫った。

ANDREW ROSS SORKIN: I don't want to diminish the risk. I'm just raising the question because we've also heard from the CEO of Huawei who says, Look, we don't share this information. We're not working with the Chinese government. Point to something specific.(アンドリュー・ロス・ソーキン: 私はリスクを減らすことに興味ありません。私が質問しているのは、HuaweiのCEOが「ほら、私たちは他者と情報を共有していません。私たちは中国政府と協力していないのです」と主張しているからです。だから何か明確な証拠を示してください。)

MIKE POMPEO: That's just false. That's just false. To say that they don't work with the Chinese government is a false statement.(ポンペオ:それは正に嘘だよ。それは正に嘘だ。中国政府と協力していないというのは、嘘の声明だ。)

アンドリューは「具体的な、正確な証拠を示してくれ」と要求しているのに、ポンペオは証拠を示すことはせず(できず?)、「Huaweiの言っていることは嘘だ」とのみ回答している。

ここで、アンドリューが"because we've also heard from the CEO of Huawei who says, Look, we don't share this information. We're not working with the Chinese government."と言っているのは、Huawei CEO(任正非)の「いつの」、そして、「どのような場面での発言」なのかを追跡してみた。

すると今年1月15日に、AP通信やCNBCを含めた英語圏の海外記者の集団インタビューに任正非(Ren Zhengfei)CEOが応じている記録を見つけた。 "Huawei's Founder Ren Zhengfei: Huawei will never provide government with customer information"
をご覧いただきたい。

このページの「3.AP通信」や「13.CNBC」などの記者による「(国家情報法に基づいて)中国政府に情報提供を要求されたら、顧客の個人情報を中国政府に提供してしまうのではないか」という安全上の質問に対して、Huaweiの任正非は以下のように回答している。回答した量が多いので、回答をまとめて簡略化した形で記述する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中