最新記事

インドネシア

ジャワサイ、腸内バクテリアで中毒死? 繁殖難しく67頭のみで絶滅の危機

2019年5月4日(土)15時30分
大塚智彦(PanAsiaNews)

今回、死骸が発見されたジャワサイ。 © インドネシア林業環境省

<世界中にわずか5種しかいないサイ。そのいずれもが絶滅の危機にあり、もはや自然繁殖では種の存続が厳しい状況に追い込まれている>

インドネシア・ジャワ島西端にある「ウジュン・クロン国立公園(TNUK)」内のジャングルで絶滅の危機に瀕している大型哺乳動物のジャワサイ1頭の死骸が発見された。

国立公園管理当局などが死因を調査しているが、今のところ密猟などの被害ではなく、病死の可能性が高いとみられている。

同国立公園では2018年4月にもジャワサイの死骸が発見されるなど減少が進んでおり、インドネシア森林環境省や自然保護団体などの調査によると残るジャワサイは67頭になったとみられ、インドネシア当局の早急な対策が求められている。

4月25日に地元マスコミが報じたところによると、3月21日昼ごろに同国立公園内バンテン州チタダハン森林地区をパトロール中の国立公園管理事務所関係者がぬかるみに横たわる大型動物の死骸を発見した。

そして調査の結果、若いオスのジャワサイであることが判明したものの正確な年齢についてはこれまでのところ分かっていない。

TNUKのモニカ・ラマニンシ広報担当は、死骸には出血も目立った外傷もないことから内臓などの病気の可能性があるとみて、関係機関で解剖して死因を特定したいとしている。

「腸の疾患による病死の可能性がある」としているが、それは同じTNUK内のカランランジャン海岸で2018年4月に死骸で発見された推定年齢40歳のオスのジャワサイが「微生物のバクテリアが腸内で発生し、それが全身に回り一種の中毒症状となって内臓にダメージを与えたことによる病死」だったことから、今回も同じである可能性を指摘しているのだ。

減少し続けた絶滅危惧種、現在わずか67頭

ジャワサイは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「ごく近い将来に野生種が絶滅する危険が極めて高い」という「絶滅危惧ⅠA種」に指定され、インドネシア国内法でも保護が義務付けられている。

かつてはインドや東南アジア一帯に生息していたが、密猟や生息地の自然環境破壊などから個体数が激減。2011年10月にベトナムで確認されていたジャワサイの最後の1頭が密猟で殺されたことでベトナムでは絶滅し、現在ではインドネシアのTNUKとその周辺でしか生息は確認されていない。

インドネシア政府などの調査でこれまでジャワサイは68頭が確認され、その内訳は大人のオスが29頭、大人のメスが24頭、子供が15頭だった。しかし、今回1頭が死骸で発見されたことで、残る生息数は67頭となったことになる。

今回死骸で発見されたジャワサイについてのインドネシア林業環境省のツイート
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中