米財務省、1カ月遅れで為替報告書公表 日本への指摘と新たなリスク
日本は為替相殺関税と為替条項を警戒
報告書は日本に関しても、厳しい指摘を継続して載せている。前回と比べて大きな変化はないものの、2018年に680億ドルに達した財の対米貿易黒字を引き続き懸念するとした。
円相場について「実質実効ベースでは過去5年間にわたって歴史的な安値圏を安定的に推移している」との認識を改めて示した。また「介入は非常に例外的な状況において、適切な事前協議を伴った形でのみ留保される」と、再度くぎを刺した。
今回の報告書では、日本に関する記述に大きな変化はないものの、最近の米商務省の動きやトランプ大統領の発言を考え合わせると、新たなリスクが浮かび上がってくる。
米商務省が23日に発表した、自国通貨を割安にする国からの輸入品に相殺関税をかけるルール改正案は、日本や中国など6カ国が対象となる可能性がある。
自国通貨を割安にすることを輸出国側の補助金と見なして関税で対抗するが、割安か否かの判断は米財務省に委ねられる。具体的には、米財務省が円は20%過小評価されていると判断すれば、20%の為替相殺関税が賦課される可能性が高まる。
また、市場は、日米通商交渉に為替条項が導入されるかどうかを警戒している。
現在行われている日米通商協議では、トランプ政権が為替条項の導入を強く求めていることが推測できると、SMBC日興証券チーフマーケットストラテジスとの丸山義正氏は述べている。
ムニューシン米財務長官は競争的通貨切り下げにつながる為替介入などの政策を自制する取り決め(為替条項)を日米通商交渉に盛り込みたい考えを示している。日本側はこれに反対する姿勢を示しており、為替については財務相間で議論するとしている。
トランプ大統領が「通商における歴史的転換点」と評した昨年の米韓自由貿易協定(FTA)では、両国が競争的な通貨切り下げを禁じ、金融政策の透明性と説明責任を約束する「為替条項」の導入で合意したと米国側は主張している。
三井住友銀行・チーフストラテジストの宇野大介氏は「中国との通商協議が平行線であることを踏まえると、米国がよりくみしやすい日本に対しては8月以降、為替相殺関税や為替条項を含めて、日米通商交渉に米国側の要求がいくらでも盛り込まれる可能性を報告書は示唆している」と指摘。夏場にかけて円高リスクの高まりを警戒すべきと語っている。
森佳子 編集:伊賀大記