最新記事

中国

「一帯一路 国際シンクタンク」結成を提唱:「新国連」を立ち上げる勢い

2019年4月27日(土)22時41分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

4月26日、第二回「一帯一路国際協力サミットフォーラム」開幕式でのスピーチ Florence Lo-REUTERS

25日、「一帯一路 国際協力サミットフォーラム」の開幕式で、習近平国家主席は「一帯一路 国際シンクタンク協力委員会」結成を提唱した。まるで世界を「紅い思想」で統一し、国連に取って代わる勢いだ。

「一帯一路」国際シンクタンク協力委員会

世界150ヵ国の代表(そのうち37か国は首脳。他は政府高官)および90以上の国際組織の代表、計5000人から成る第二回「一帯一路 国際協力サミットフォーラム」が25日から27日の日程で、北京で開催された。日本からは自民党の二階幹事長らが参加する中、アメリカは政府高官の派遣を見送っている。

その開幕式で習近平国家主席がスピーチをした。

中国語にして約4,300文字のスピーチの中で、最も気になったのは「一帯一路 国際シンクタンク協力委員会」の結成を呼びかけたことである。

習近平は「これから5年の間に、中国は「一帯一路」を共に建設する国家の政党やシンクタンクあるいは民間組織などから1万人の代表を招聘して中国に来ていただき交流を図るつもりだ」と述べた上で、「われわれは更に、一帯一路 国際シンクタンク協力委員会や新聞協力聯盟等の機構を皆様と共に建設し、さまざまな領域からの知恵と力を1つに結集したいと思っている」と呼びかけた。

そして常套句である「人類運命共同体」を共に構築すべく推進していこうではないかと結んでいる。

この「国際シンクタンク協力委員会」こそは、まさに、2018年1月17日付のコラム<「チャイナ・イニシアチブ」に巻き込まれている日本>で述べた中国の戦略を具現化したものである。当該コラムにもあるように、「チャイナ・イニシアチブ」は、「西側の価値観」に代わって、中国がグローバル経済をテコに「北京発の世界の価値観」を創りあげ、一気に中国に傾かせていこうという戦略であるということもできる。そのために関係各国の政党の中から「キーパーソン」を見つけて、その人に「ターゲット」を絞り洗脳していくのも手段の一つだ。

習近平がスピーチで「各国の政党」と言ったのは、主として「政権与党の政党」であって、まさに自民党の二階幹事長などのような存在を指しているのである。

習近平政権はハイテク国家戦略「中国製造2025」を完遂して、何としてもアメリカを乗り越えようとしているが、一方では「一帯一路」を通して、精神的に多くの国を「親中」に傾かせていこうという戦略を練ってきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中