最新記事

一帯一路

中国、「一帯一路」参加国の不安払拭に注力 東南アジアの鉄道計画再開アピール

2019年4月27日(土)12時48分

「非常に有利な条件」

インドネシアでのプロジェクトをめぐる合意に詳しい銀行関係者によれば、プロジェクトは「非常に有利な条件」の下で構築されているという。

ロイターが閲覧したプロジェクト趣意書によれば、総工費60億ドルのうち45億ドルは中国開発銀行が2%の金利で融資する。プロジェクト総工費の残り25%は、コンソーシアムが提供する株式によって調達される。

この融資には、国家による債務保証が設定されない予定だ。国家による債務保証は、参加国の政府にリスクを転嫁するものとして、一帯一路構想で最も議論を呼ぶ部分の1つとなっている。

中国政府は2015年、高速鉄道に関する専門能力を世界中の顧客に示す手段として、インドネシアでのプロジェクトを落札すべく、日本政府に対抗して活発なロビー活動を行った。

「中国は、自国の高速鉄道が日本よりも優れていることを誇示したがっていた。われわれが、可能な限り金利を低くするよう求めたら、2%を提示してきた」とインドネシアのスマルノ国有企業担当相は今年初め、ロイターに語った。

この鉄道をめぐる融資条件は、4月のインドネシア大統領選挙でも争点となった。現職のジョコ・ウィドド大統領に挑戦した元軍人のプラボウォ・スビアント氏は、自分が当選したらプロジェクトを見直すと公約していた。

選挙結果はまだ正式には確定していないが、独立系の世論調査会社によるサンプル調査では、ウィドド氏が2期目を務めるものと予想されている。

現場レベルでは、プロジェクトの完成について何の疑問も出ていないようだ。インドネシアでは、作業員らが掘削機械を丘陵の裾野に向け、赤土を搬出しつつ、バンドン郊外の茶栽培農園にあるワリニ駅に通じる2本のトンネルを掘り進めている。

現場にいた中国人労働者は、1年前からこの現場で働いており、2021年のプロジェクト竣工までこの地にとどまる予定だとロイターに語った。沿線には、鉄道コンソーシアムにより4カ所の新たな衛星都市が建設される予定だ。

ウィドド政権は現在、中国系企業に対して最大910億ドルのインフラ整備プロジェクトを提示している、とルフト・パンジャイタン海運担当大臣は語る。中国当局者がインドネシア国内の地方政府を回って、投資すべきプロジェクトを物色しているという。

ウィドド大統領は「一帯一路」フォーラムに派遣される代表団を率いる意向であり、フォーラムでは、いくつかのプロジェクトについて調印式が行われるものと見られると、2人の高官がロイターに語った。

高官の1人、インドネシア投資調整庁のトップであるトーマス・レンボン長官はロイターに対し、今回の一帯一路参加国首脳会議は、中国がこれまでよりも交渉に前向きになる「一帯一路2.0」に向けた転機になることを期待している、と語った。

「中国指導部は一帯一路を成功させるためには何でもやるだろう。たとえそれが、もっとプロフェッショナルに、透明性を高め、より協力的になることを意味するとしても」とレンボン長官は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産自の業績に下方圧力、米関税が収益性押し下げ=S

ビジネス

NEC、今期の減収増益予想 米関税の動向次第で上振

ビジネス

SMBC日興の1―3月期、26億円の最終赤字 欧州

ビジネス

豪政府「予算管理している」、選挙公約巡る格付け会社
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中