トランプ「護衛官」、バー司法長官のロシア疑惑
So Many Conflicts, So Little Time
次はモスクワのアルファ銀行との関係だ。17年3月から司法長官に就任するまでの間、バーが弁護士として所属していた法律事務所カークランド&エリスはアルファ銀行の代理人だった。また同事務所の共同経営者で、やはりアルファ銀行とつながっているブライアン・ベンチョースキーは17年6月、トランプから司法省犯罪対策部門のトップに指名されている(昨年7月にようやく承認された)。
ベンチョースキーは同法律事務所でアルファ銀行の代理人を務め、同銀行とトランプのファミリー企業トランプ・オーガニゼーションがオンライン上で怪しげなやりとりをしていたとの疑惑にも対応していた。
また同銀行の株主にはロシアの富豪ゲルマン・ハンがいる。そしてこの男の娘婿で弁護士のアレックス・バンデルズワンは、ロシア疑惑の捜査で虚偽の供述をしたとして訴追されている。
「弁護士の職業規範に照らすと、バーが同銀行の法律顧問だったかどうかはとても重要だ」と前出のフリシュは言う。「もしも法律顧問の立場であれば、直接的な関わりはないとしても、利益相反の疑いが生じ得る」
次は米オクジフ・キャピタル・マネジメントという名のヘッジファンド。バーは16年から18年まで役員会に名を連ねていた。そしてこの会社も怪しい。
共謀疑惑の発生地点
このファンドは米大富豪ジフ兄弟の出資金を元手に、資金運用のプロであるアメリカ人のダン・オクが立ち上げたもの。07年の上場後もジフ兄弟は同社の株式を保有しているが、彼らはロシア政府から目を付けられてもいる。ロシア政府と対立する米資産家ビル・ブラウダーと仕事上のつながりがあるからだ。
16年6月のトランプ陣営幹部とロシア人弁護士の秘密会談で、ジフ兄弟の名前が出たことも分かっている。問題の弁護士ナタリア・ベセルニツカヤが、ヒラリー・クリントンによる「違法行為」の証拠をちらつかせたときのことだという。
バーがオクジフに在籍していいた事実だけで、利益相反の可能性があると考える専門家もいる。ロシア政府がジフ兄弟に関心を抱いていた事実も、今回の捜査の対象だったからだ。
「あの秘密会議にベセルニツカヤが出席していて、ブラウダーとその交友関係について話したという事実。それを踏まえると、あの会合の目的は何で、ブラウダーやジフ兄弟の役割は何かという疑問が生じる。そこで何らかの共謀があったのだろうか」とシュガーマンは問う。
そして最後に、ドイツ銀行の問題がある。ドイツ銀行は大統領の座を目指すトランプに融資を提供していた唯一の銀行として知られるが、バーはここに相当な資産を預けていた。この銀行はロシアの資金洗浄疑惑でも名前が挙がっており、議会が今もトランプと同銀行のつながりを調べている。
いかがだろう。これだけの事実がそろえば、バーはロシア疑惑の捜査の監督から身を引くべきではないだろうか。