NYの新興大麻ビジネス、アメリカ特有の連邦法と州法の違いで大混乱
大麻(マリフアナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)を使ったお茶やチョコレートの製造・販売に、ニューヨーク州当局がゴーサインを出したのは昨年12月中旬だ。ニューヨークのクイーンズ地区にある、CBD食品を取り扱うカフェのサイン。3月撮影(2019年 ロイター/Brendan McDermid)
大麻(マリフアナ)から抽出されるカンナビジオール(CBD)を使ったお茶やチョコレートの製造・販売に、ニューヨーク州当局がゴーサインを出したのは昨年12月中旬だ。
CBDには、大麻特有の「ハイ」な効用状態を引き起こさず不安やその他の症状を和らげる効果があるとされる。
だがその後、ニューヨーク市の保健査察担当者が、ファットキャット・キッチンなど地元のカフェやレストランから数千ドル相当のCBD入り食品や飲料を押収。販売中止しなければ、罰則を科すと警告した。ほんの数週間前、連邦法により全米でCBDが明文的に合法化されたばかりだった。
ニューヨーク市による取り締まりは、CBDを巡る連邦、州、自治体の規制に一貫性が欠けている実態を浮き彫りにしている。ニューヨークなどの州で、こうした食用品を扱う店舗数は多くはないが増えており、こうした状況に困惑している。
「法に従おうとしているが、法が何を認め、何を禁止しているのか完全に把握している人は誰もいないようだ」。ファットキャット・キッチンのオーナーであるC・J・ホルム氏はそう語る。同店はCBD入りのコーヒーやクッキーを扱っていることを店頭で宣伝している。
CBD入りのチンキ剤や塗り薬、食品に対する消費者の関心は、近年の段階的なマリファナ合法化とともに拡大している。医療用または嗜好(しこう)品としての大麻使用は33の州で合法化されているが、連邦政府は依然として禁止したままだ。
米国の消費者は昨年、CBD入りの食品や飲料を3億ドル(約330億円)程度購入したと、コーエン・ワシントン・リサーチ・グループは推計している。飲料大手コカ・コーラなどの食品大手も、この分野に関心を示している。
昨年12月施行の改正農業法は、精神活性化合物であるテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が少ない「ヘンプ」と呼ばれる大麻から抽出されるCBDを合法化することで、その法的位置づけを明確にする意図も込められていた。
だが同法は、CBD入りの食品・飲料販売を検討していた業者にとり、新たな混乱の種となった。一部の業者は、ある一連の規制を、別の規制に違反せず遵守することが不可能となった。
例えば、ニューヨークでは、州の農業局が昨年12月、「CBD茶」や「CBDを振りかけたチョコレート」などの関連食品について、通常の食品より厳しい基準が設けられる「食品サプリメント」して販売する限り合法とするガイダンスを出した。
その一方で同局は、こうした販売行為が、CBDをサプリメントとして食品に加えたり販売することを違法とする連邦政府の食品医薬品局(FDA)ルールに反する可能性があると警告した。これは、FDAが昨年初めて、CBDを有効成分とする医薬品を認可したためだ。