新元号「令和」の日本、転換点の景気 世界情勢が舵取り左右
膨張する債務と消費増税の行方
平成を振り返って、マクロ政策面で突出している特徴の1つは、財政赤字の膨張だ。平成2年度(1990年度)にいったん、赤字国債脱却を達成したが、バブル崩壊で平成6年度(1994年度)に再び赤字国債の再発行に追い込まれ、累積した債務は、公債残高ベースで900兆円と、税収の約14年分にまで積み上がった。
平成18年度(2006年度)以降、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の赤字解消を目標に掲げ、平成27年度(2015年度)に中間目標である「赤字半減」は達成したが、黒字化そのものは新時代に先送りした。
その目標について、安倍首相は「国際公約と言ったことはない」と繰り返し発言し、市場の疑心暗鬼は絶えない。
疑い深い市場心理と密接にリンクしているのが、平成26年(2014年)11月と28年(2016年)6月に2回表明された増税延期の決断だ。「3度目の正直」となるか「2度あることは3度ある」となるのか、専門家の見方も二分され「再々延期される可能性は、十分に残っている」(みずほ証券・シニアマーケットエコノミスト、末廣徹氏)との声がくすぶる。
首相の決断を左右する国際経済情勢
首相の決断を左右すると見られているのが、海外経済の動向。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏は「元号と景気には何の因果関係もないが、世界経済には1980年代の米貯蓄貸付組合(S&L)危機、1997年のアジア通貨危機、2008年のリーマン・ショックなど10年サイクル説のジンクスがある」と指摘。次の危機は「中国が絡むのだろうと何となく思われている」と話す。
その中国経済に対しては「米中貿易摩擦の動向は金融市場に織り込み済みで、中国経済のハードランディングはないだろう」(RPテックの倉都康行代表)との楽観的な見方が今のところ多数派だ。
だが、横浜国大の上川教授は「米中対立は経済だけでなく覇権を巡る対立。10年、20年と継続する可能性がある」と述べるとともに「中国のドル建て債務が膨らんでいる」と指摘。今後の情勢次第では、世界の金融システムに負担をかけるリスクにも言及した。
「令和」の時代は、平成の31年間と比べ、グローバルな情勢変化の影響を受ける可能性が一段と高まりそうだ。
(ポリシー取材チーム 編集:田巻一彦、石田仁志)
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