比ドゥテルテ、違法銃器を集中捜査 市長など23人逮捕に隠された闇
5月13日の中間選挙が関連か
さらに5月13日には上院の半数と下院、地方議員を選出する中間選挙が予定されており、今回の一斉摘発はドゥテルテ政権による選挙向けのパフォーマンスではないかとの見方もでている。
アルバヤルデ長官は「今回の一斉捜査は政治的なこととは無関係で、あくまで法を正しく適用したまでである」と述べ、摘発はその多くを「目撃証言や寄せられた情報に基づくものである」としてドゥテルテ大統領による政治的動機との見方を否定した。
実際、2018年12月27日には東ネグロス州ギフルガン市でセブ島から警察官、国軍兵士約1000人を派遣して大規模な不法銃器取り締まりが行われている。この取り締まりではバイクタクシーの運転手など5人が捜査の過程で射殺され、数十人が逮捕された。
だが、このときの捜査についても違法な取り締まりがされたという声がある。捜査当局は容疑者が逮捕段階で抵抗したためにやむを得ず射殺したと説明したものの、現地では「無抵抗、非武装の容疑者が一方的に射殺された」「容疑者とされた者の家を警察官が家宅捜査の最中に銃器を置き、それをもって容疑理由にされた」などの証言が相次ぎ、捜査のあり方が批判されていた。
麻薬、不法銃器で実績アピール
フィリピンではドゥテルテ大統領が強力に進める麻薬関連事犯の摘発に関連して、3月14日には麻薬犯罪に関与した疑いのある国会議員や市長ら40人のリストをドゥテルテ大統領の指示で公表。リストに名前が挙げられた政治家らが一斉に関与を否定するとともに反発する騒ぎとなっている。
このように5月13日の中間選挙に向けて、国内治安対策での大きな成果を国民に示す必要性からドゥテルテ大統領が国家警察などの治安当局を動員して、麻薬関連犯罪、不法銃器所持取り締まりに積極的に乗り出している、との見方が有力だ。
このためドゥテルテ大統領に批判的な勢力、政治家、地方自治体関係者の間では疑心暗鬼が広がっているという。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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