最新記事

犯罪

比ドゥテルテ、違法銃器を集中捜査 市長など23人逮捕に隠された闇

2019年4月2日(火)19時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)

フィリピンでは選挙が近づくと対立候補者やその関係者を狙う殺人事件が増加し、違法銃器のニーズが高まるという。写真はセブ市の違法銃製造工場 Erik de Castro - REUTERS

<麻薬関連の犯罪者を「超法規的殺人」で取り締まったドゥテルテ。中間選挙が近づいた今、銃の不法所持にも同じような強硬姿勢で臨んでいる>

フィリピン国家警察が3月に集中的に実施した不法銃器取り締まり捜査の結果、市長などの公務員23人を含む168人を逮捕、多数の銃器、爆弾、弾丸を押収したことがわかった。これは国家警察が4月1日に明らかにしたもので、地元紙「フィリピン・スター」などが伝えた。

フィリピンは建て前では銃器の所持はライセンスが必要な許可制ではあるが、身分証明書があれば誰でも簡単に許可を得られるほか、無許可で不法に所持されている銃器も相当数あるといわれている。国家警察によれば合法的に所持が登録されている銃器は120万丁以上だが、未登録の不法銃器が60万丁以上存在しているという数字もある。

国家警察は3月22日から28日にかけてフィリピン全土で一斉に銃器の不法所持に関して集中的な一斉取り締まり・捜査を実施。合計で銃器248丁、爆発物34個、弾薬6605発を押収した。

国家警察のオスカー・アルバヤルデ長官によると今回の大規模捜査は「組織犯罪の予防と不法な未届け銃器の摘発が目的」という。

4月1日に公表された集中捜査の結果、168人を逮捕したが、このうち23人は地方政府など行政機関の公務員で市長1人、副市長1人、町長1人、行政の最小単位であるバランガイの首長9人、バランガイの委員10人などが含まれていたことを明らかにした。

3月23日に逮捕されたディナガット島トゥバヨン市のロメロ・バルガス市長はM16ライフル、22口径リボルバー銃と弾薬を不許可で所持していた。

フィリピンでは政敵らによる銃を使った脅迫や襲撃、暗殺が選挙の時期などに多発することから、政治家や地方自治体の首長らが正当防衛のためと称して武装していることが多く、今回の摘発でもそうした理由で武器を所持していた地方自治体の関係者が逮捕されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、1カ国と貿易協定で合意と商務長官 国名は明かさ

ワールド

米、ウクライナ紛争終結へ進展なければ仲介役から退く

ワールド

インドとの関税交渉は順調、合意に至る見通し=トラン

ビジネス

商品価格、26年にコロナ禍前水準に下落 経済成長鈍
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中