アポロ11号アームストロング船長の知られざる偉業
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アフリカ上空を飛びながら、アームストロングは不安と闘っていた。もしも地面に激突したら? 機体は激突に耐えるように設計されている。だがいくら操縦席の耐衝撃性が優れていようと、すさまじい衝撃を受けるのは間違いない。障害物も避けようがない。大気圏に突入し、目前に迫るヒマラヤ山脈を見ると、スコットも不安を募らせた。しかし機体が急降下を続け、パラシュートが開き、眼下に青い海が見えたとき、2人は胸をなで下ろした。
着水してから20分後、空軍の輸送機から飛び降りた潜水要員3人がジェミニを確保。3時間後には駆逐艦がウインチで艦上に引き揚げた。10時間41分の飛行で乗組員は疲弊していたが、健康に問題はなかった。
あの2人、パニックを起こしたらしいぜ。そんな噂を流す者もいたが、ベテランの宇宙飛行士なら知っていた。アームストロングとスコットは手引書に従って行動し、生き残るために必要なことをやってのけたのだ。しかも見事に。極限状態を冷静に乗り切った2人をNASAはたたえた。とりわけ船長のアームストロングには脱帽した。
このフライトで周知の事実が再確認された。ニール・アームストロングはどんな危機に遭遇しても動じない冷静な男だということ、である。
(c) 2019 by James Donovan. Reprinted with permission of Little, Brown and Company. All rights reserved.
<本誌2019年4月2日号掲載>
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