ボーイング最新鋭機はなぜ落ちたのか
Boeing and FAA Face Credibility Crisis
名ばかりの新型機だった
専門家の間からは、世界最大の航空機メーカーとあろうものが前代未聞の信頼感の危機にさらされるとは一体なぜなのかと問う声もある。
答えは737MAX開発史に潜んでいるかもしれない。それが「夢の新型機」ではないことはボーイング社も認めている。
737の後継にはまったく新しい機種を開発する予定だったが、競争激化で急きょ改良型を導入することになったという。
11年に仇敵エアバス社がA320neoをアメリカン航空に260機注文させるという形で米市場に乗り込んでいた。だからボーイングも新型機で迎え撃つしかなかった。
737の改良には5年の月日を費やした。新式の大型エンジンを機首に近めの位置に搭載して揚力を増す。だがそれでは離陸直後に機首が上向きになり過ぎるかもしれない。失速する可能性もある。対策として作られたのがMCAS、すなわち自動的に機首を下げるシステムだ。
ところがボーイングは、737MAXが世界中で売れに売れても、このMCASのことをパイロットたちに十分に伝えようとしなかったようだ。
パイロットにとって離陸は最も難しい作業の1つだ。アメリカン航空のタヘルによれば、MCASは高度約300メートルで作動可能となる。そこで仮に機首が上がり過ぎと判定されたら、パイロットは余計に緊張を強いられる。「いろんなことに気を取られる。そこへシステムが介入する。10秒単位で、機首を下げて機体を水平にしようとする装置と闘うことになる」とタヘルは言う。またMCASが単一のセンサーに頼っていることも問題視している。
前出のゴールズが言う。「ボーイングは(737MAXの売り込みに当たり)旧型737機を操縦した経験者なら簡単な再研修で十分だと言っていた。何度もフライトシミュレーターで練習しなくていいと。だからパイロットの中には、あのシステムを理解せず、いざというときの対応も分かっていない人がいるようだ」
<本誌2019年03月26日号掲載>
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