ボーイング最新鋭機はなぜ落ちたのか
Boeing and FAA Face Credibility Crisis
米国家運輸安全委員会の元幹部のピーター・ゴールズは、FAAがエチオピア航空の事故の翌日に通知を出したのは「MCASの搭載に懸念を抱き、その仕組みや誤作動時の対処方法について、操縦士たちに確実に理解させるためだ。こうした情報は、納入時に配布されるマニュアルや運用ガイドでは強調されていなかった」と語る。
ゴールズによれば、必要な情報は当初「マニュアルの中に埋没」していたので、FAAは操縦士がしっかり理解できるように強調しているのだという。さらに、アメリカ人パイロットを含む多くの操縦士は、ライオン・エアの事故が起きるまでMCASの存在に気付いておらず、訓練生の理解となると、さらに遅れている国があるとも指摘した。「途上国などでは、アメリカの航空会社ほどには訓練が行われていないだろう」
運航開始1年半の事故
昨秋、サウスウエスト航空パイロット組合のジョン・ウィークス委員長は、米シアトル・タイムズ紙に、同社の操縦士もMCASについて「何も知らされていなかった」と述べている。
インドネシア沖でライオン・エア機が墜落したのは、737MAXの商業運航が始まってから1年半もたたない頃のことだった。事故原因の調査はまだ終わっていないが、MCASが自動的に作動し、勝手に機首を押し下げた疑いがある。しかも操縦士あるいは副操縦士がMCASを遮断しようとした形跡はないという。つまり、遮断できることを2人とも知らなかった可能性がある。
エチオピア航空機の機長は総飛行時間8000時間のベテランだった。だが副操縦士は200時間にすぎなかったと思われ、欧米の主要航空会社が求める水準には遠く達していなかった。
ライオン・エアの事故機から回収されたブラックボックスに基づいて調査したインドネシア政府によると、事故機のパイロットたちは「いわば10分間の綱引きに苦しんだ。新しい失速防止装置(MCASのこと)は容赦なく26回も機首を押し下げ、機体は制御不能に陥った」とシアトル・タイムズは伝えている。「パイロットは機首が下がるたびに引っ張り上げた。しかしなぜか、前日に操縦したパイロットたちがしたように、単純にMCASを遮断しようとはしなかった」とも指摘している。
ボーイング社が11日に発表した声明によると、同社はライオン・エア機の事故後、「安全な737MAXをさらに安全にするため機体制御ソフトウエアの拡張機能を開発している」ところであり、「そのためにFAAと緊密に協力してきた。数週間後には737MAXシリーズに搭載する」予定だという。
ボーイングがライオン・エアの事故を受けてFAAと協力した内容を知る関係者によれば、ボーイングは緊急時の操作を単純化することで安全性を改善できるとみたようだ。それは4月予定の変更に含まれる。
ほかに予定される変更は、ソフトウエアによる自動制御を減らすことや緊急時に(装置でなく)操縦士が素早く対応できる態勢を強化することなどだ。
FAAの資料によると、米国内では737MAX8の制御について最近数カ月に少なくとも5回、操縦士から問題点の指摘があったと、ニュースサイトのポリティコが伝えている。その一部はMCAS関連のようだ。
ちなみにトランプも大統領令を出す前日にツイッターで「航空機の操縦は複雑になり過ぎている」と投稿していた。