最新記事

動物

謎のシャチが見つかった?未知の4種目の可能性

New Species of Killer Whale Discovered Off Chile Coast

2019年3月12日(火)14時04分
ハナ・オズボーン

頭が丸く白いアイパッチがある「シャチ」の珍しい写真 J.P. Sylvestre, South Georgia, 2011.

<まばらな目撃情報だけで長年確認できずにいた未知の4種類目のシャチを、研究者たちが遂に発見したかもしれない。DNA分析の結果に期待が高まる>

「タイプD」と呼ばれる新種のシャチが、アメリカ海洋大気局(NOAA)の研究者たちによって、南米チリ沖で発見された可能性がある。タイプDはこれまで、漁師の証言や、観光客が撮影した写真を通じてしか、その存在が知られていなかった。また、60年以上前にニュージーランドの海岸で座礁したシャチも、タイプDだったのではないかとされていた。

この新種は、ほかの種類のシャチとは異なり、頭が丸く背びれが尖っている。また、目の上のアイパッチと呼ばれる白い模様が小さめだ。

専門家たちのあいだでは何十年も前から、シャチにはタイプA、B、Cがいることがわかっていたが、いくつかの目撃情報などから、もう1種類存在するのではないかと考えられてきた。

1955年、17頭のシャチがニュージーランドの海岸で座礁した。見た目は普通のシャチと違っていたが、当時の研究者たちは、単なる遺伝子変異のせいであろうと判断した。

2005年になって、NOAAの南西水産科学センターでシャチを研究するボブ・ピットマンは、見た目が変わったシャチの写真を見せられた。南インド洋で働く漁師が撮影したその写真に写っていたのは、頭が丸く、白くて小さなアイパッチがあるシャチで、1955年にニュージーランドで座礁した生物とそっくりだった。

「未発見」の動物で最大級

その後、南極圏に観光客が大挙して押し寄せるようになると、同様の「変わったシャチ」の写真がどんどん見つかるようになった。ピットマンは2010年、タイプDのシャチが存在を学術論文で発表した。しかし物的証拠に欠けていたため、ピットマンは同僚研究者たちとともに、タイプDを発見すべく探査に乗り出した。

ピットマンたちは、目撃された地点と漁師たちの証言に基づき、南米最南端であるチリのホーン岬の沖へと向かった。そして、そこで何週間もひたすら待った末に、30頭ほどのシャチの群れが観測船に近づいてきたのを目撃した。

シャチの鳴き声を研究するレベッカ・ウェラードは、群れが発した鳴き声を録音した。また、水中カメラでシャチを撮影し、体形や模様を詳細に観察した。映像には、シャチたちが観測船の周りを泳ぐ様子が映されている。

チリのホーン岬の沖で発見された「新種のシャチ」の群れ

研究チームは最後に、クロスボウを発射して皮膚のサンプルを採取した。このシャチが新種かどうかを明らかにするため、実験室でDNAを分析するためだ。

ピットマンは声明で、「遺伝子解析の結果がわかるのが楽しみだ。タイプDのシャチは、まだ詳しく知られていない地球上の動物のなかで最大級かもしれない。海に暮らす生物について、知られていないことがまだたくさんあるのは明らかだ」と述べた。

(翻訳:ガリレオ)

※3月19日号(3月12日発売)は「ニューロフィードバック革命:脳を変える」特集。電気刺激を加えることで鬱(うつ)やADHDを治し、運動・学習能力を高める――。そんな「脳の訓練法」が実は存在する。暴力衝動の抑制や摂食障害の治療などにつながりそうな、最新のニューロ研究も紹介。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、コロンビアに関税・制裁 移民送還拒否受

ワールド

イスラエル軍、レバノン撤収期限後も攻撃 22人死亡

ビジネス

デジタルユーロの導入必要 米の仮想通貨推進に対抗=

ワールド

マスク氏、独極右政党イベントでビデオ演説 支持を改
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの頭の中
特集:トランプの頭の中
2025年1月28日号(1/21発売)

いよいよ始まる第2次トランプ政権。再任大統領の行動原理と世界観を知る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 2
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 3
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが物議...事後の悲しい姿に、「一種の自傷行為」の声
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    「1日101人とただで行為」動画で大騒動の女性、アメ…
  • 6
    「ハイヒールを履いた独裁者」メーガン妃による新た…
  • 7
    ネコも食べない食害魚は「おいしく」人間が食べる...…
  • 8
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 9
    「後継者誕生?」バロン・トランプ氏、父の就任式で…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ人の過半数はUSスチール問題を「全く知らない」
  • 4
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 5
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 6
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 7
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 8
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    軍艦島の「炭鉱夫は家賃ゼロで給与は約4倍」 それでも…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中