「ハゲタカファンドは人さえ殺している」ジグレール教授の経済講義
●エーッ! ちょっと難しい!
――例をあげよう。1979年、ザンビアはルーマニアから農業用の装備品を3000万ドルで輸入した。しかし1984年、国は支払いができなくなった。このときとばかり、ヴァージン諸島にあるファンドの一社がルーマニアの債券証書を300万ドルで買った。そしてその会社はそのあと、元の3000万ドルの支払いを求めてロンドンの法廷に提訴した。
勝訴した会社はついで、世界じゅうに輸出されているザンビアの銅や、ロンドンにあるザンビア政府の不動産、南アフリカに入国するザンビアのトラック......などを差し押さえた。
結局、ザンビア政府は譲歩し、このハゲタカファンドに1550万ドルを支払うことにした。
2017年現在、26社のハゲタカファンドが債務国32か国に対して48か所の裁判所に提訴しており、その訴訟手続きが227件も係争中だ。
ハゲタカファンドが勝訴する割合は、2005年から2015年のあいだで77パーセントにのぼっている。この期間に彼らが手にした利益は33 パーセントから1600パーセントとさまざまだ。
●こんな冷酷なことが行われているなんて! 貧しい人たちはハゲタカファンドからいっさい守られていないということね。法律を変えて、こんな卑劣な行為を禁止することはできないの? 法律を新しくするべきではないの?
――貧しい人たちは実際、何からも守られていない。いくつかのケースでは、ハゲタカファンドは人さえ殺しているのだよ。アフリカ南東部にある小さな農業国マラウイの例をあげよう。
この国の国民の主食はトウモロコシで、飢饉が頻繁に起きることから、政府はその対策としてトウモロコシを貯蔵していた。貯蔵庫を管轄していたのは食糧貯蔵庁で、2000年には4万トンのトウモロコシが貯蔵されていた。2002年、激しい干ばつによって収穫の大部分が被害を受け、人口1100万人のうち700万人が飢饉に見舞われた......。
ところが、政府には国民を救援するための貯蔵がもうなかった。貯蔵庫は空っぽだったのだ。じつはその数か月前、イギリスの裁判所が食糧貯蔵庁に4万トンのトウモロコシを世界市場に売るよう判決を下していたのだね。それは、あるハゲタカファンドに同額を外貨で払うためだった。
こうしてマラウイでは、数十万人の子どもも含めた老若男女が飢えで死んでしまったのだ。
●それはおかしいわ、おじいちゃん。債務の減額交渉に応じた銀行側は、ハゲタカファンドのやり方に反対しないの?
――もっと悪い! 銀行側は口をはさまないだけでなく、多くは2つの態度を使い分けている。ハゲタカファンドによって生まれる利潤はけた外れで、大銀行の多くはこれらハゲタカファンドの大株主でもある......。