「ハゲタカファンドは人さえ殺している」ジグレール教授の経済講義
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<資本主義とは何か。格差の現実をどう理解すべきか。今こそ知るべきこれらのテーマについて、スイスの政治家であり社会学者ジャン・ジグレールが平易に解説する(シリーズ第3回)>
グローバル化が進む中、「格差」や「貧困」が大きな問題として取り上げられることが増えてきた。「世界人口の約半数と同じ富がわずか26人の富裕層に集中している」(国際慈善団体オックスファムの最新のレポート)といった格差の「現実」が報道されるたび、激しい反発を引き起こす。
貧困と社会構造の関係について人道的立場から発言を続けるジャン・ジグレールは、スイスの政治家であり社会学者。そうした資本主義の「負の側面」を語るのにうってつけの人物だ。
そもそも資本主義とは何か。途上国の負債がふくらみ続けるのはなぜか。格差が「人を殺す」とはどういうことか。
こうした疑問を出発点に、できるだけ平易な解説を試みたのが、ジグレールの新著『資本主義って悪者なの?――ジグレール教授が孫娘に語るグローバル経済の未来』(鳥取絹子訳、CCCメディアハウス)だ。
ここでは本書から一部を抜粋し、3回にわたって掲載する。この第3回ではジグレールが孫娘のゾーラに、ハゲタカファンドの冷酷な手法について解説する。
※第1回:「給与所得者の保護政策はどの国でも後退している」ジグレール教授の経済講義
※第2回:「途上国支配に最も有効な方法は債務漬けにすること」ジグレール教授の経済講義
●ハゲタカファンドって聞いたことがあるけれど、正確にはどういうものなの? だって、おじいちゃんと会うたびにその話をしてもらっていたから......。
――さっき話した通り、発展途上国の大半は対外債務に押しつぶされそうになっている。定期的に、一部の国は返済不能になって、債権側の大銀行に利息も減価償却分も払えなくなるのだね。その時点で、破産寸前になった国はこう言う。「わが国はもう払えません。債務を減額する相談に乗ってください」とね。
銀行側がそれに応じることがある。彼らの理論は、1銭ももらわないより、全体の30パーセントでも40パーセントでももらったほうがいいというものだ。そこで債務国は、債券と呼ばれる、当初の金額より70パーセントから60パーセント減額した新たな有価証券を発行する。
しかし、元の債券証書はそのまま市場に出回っている。ときを見計らって、タックス・へイヴンのバハマやキュラソー島、ジャージー島に本社を置く投資ファンドはそれらを非常な安値で買いたたき、次にニューヨークやロンドン、その他の国の裁判所に提訴して、原本の債務の100パーセントの返済を求める。そして、たいていの場合、ハゲタカが勝訴する! まさに死んだ動物や瀕死(ひんし)の動物を餌えさにするハゲタカのようにね。