【資産形成】40~50代が運命の分かれ道?
最後に、世帯主の年齢が30歳代の世帯の試算結果を用いて、若年層における純貯蓄額の差の拡大が、地道な努力と所得格差のいずれによるものかを視覚的に確認したい。確認するにあたり、各世帯年収区分に対し代表値を設定した(所得が低い順に、200万円、400万円、625万円、875万円、1,100万円、1,500万円)。同様に各貯蓄割合区分に対しても代表値を設定した(貯蓄割合が低い順位0%、2.5%、7.5%、12.5%、17.5%、22.5%)。これらの条件の下で推計した年間貯蓄増加額毎の世帯割合を求め、図表5に収入別の結果を示す。当たり前だが、30歳代の年収300万円未満の世帯で年間50万円以上貯蓄する事は難しく、所得格差の影響は否定しない。しかし、代表的世帯である「300~500万円未満」と「500~750万円未満」のいずれにおいても、年間貯蓄増加額50万円以上の世帯が最も多く、その次に貯蓄割合が0%もしくは金融資産を保有していない世帯が多い。加えて、30歳代では全体の10%に満たない年収1,000万円以上世帯の中にも、年間貯蓄増加額が0円の世帯が存在する。地道な努力を重ねる「アリ派」と「キリギリス派」に大きく二分されていることが分かる。
住宅ローン返済の影響が考慮できていない等の試算上の制約はあるが、平均的な収入の若年層における純貯蓄額の差の拡大は、地道な努力の結果によるところが大きいのではないかと考えられる。
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポートからの転載です。
[執筆者]
高岡和佳子
ニッセイ基礎研究所
金融研究部・
主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任
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