【資産形成】40~50代が運命の分かれ道?
年収が多くなくても若いときの頑張り次第で老後に十分な生活資産を残すことはできる PeopleImages/iStock.
<相続財産がなくても老後の生活資金を確保できるか否かは、若い時の地道な努力の結果によるところが大きいようだ>
つみたてNISAやiDeCoなど、資産形成に注目が集まる。老後に備え用意すべき金額の目安は2,500 万円といった記事を眼にする機会も多い。資産形成のゴールに関する情報は多いが、各世帯のゴールまでの過程についてはよくわからない。そこで、総務省家計調査報告(2017年平均結果の概要)を参考に、世帯間の資産形成状況の差が何歳頃に拡大するのかについて、視覚的な把握を試みる1。
家計調査報告に年齢階級別、純貯蓄現在高五分位階級別の平均純貯蓄額(貯蓄額-負債額)が示されているが、平均純貯蓄額だけでは、資産形成状況の差を把握するには不十分である。資産形成においてマイホームの購入も重要な役割を果たすのに、貯蓄額に持家が含まれないからである。また、持家の有無によって将来の費用も大きく異なるため、純貯蓄現在高五分位階級が等しい世帯を「純貯蓄現在高五分位階級別の持家率」に応じて二分する。この際、同階級内において、住宅を保有しない世帯と住宅を保有する世帯の平均純貯蓄額に差が無いことを仮定している。その上で、「住宅を保有しない世帯が今後住宅を保有する世帯より多く支払う住居費の現在価値の総和(以下、将来住居費差分)」を考慮し、資産形成状況の差を把握する。なお、将来住居費差分は、「持家世帯と民営借家世帯の住居費の差」と「年齢階級別の概算余命」を用いて算出した。
図表1の左上から反時計回りに、年齢階級別の資産形成状況を表示する。各図の上段の円は住宅を保有する世帯、下段の円は住宅を保有しない世帯を表している。上段・下段の複数の円は純貯蓄現在高五分位別の世帯を表しており、最上位を青色、最下位を赤色で表している。横軸が純貯蓄現在高五分位階級別の平均純貯蓄額、上段と下段の距離が将来住居費差分、円の面積の大小は属する世帯数の割合の多寡を表している。左上から右下に向かう3本の点線は、将来住居費差分を加味した実質的な純貯蓄額(平均純貯蓄額-将来住居費差分)が▲2,500万円、0万円、+2,500万円となる水準を示している。
29歳以下では(図表1左上)、大部分の世帯が持家を保有せず純貯蓄額も0万円前後(下段の黄円~水色円)で、2割弱の世帯が持家を保有し多額の住宅ローンを抱えている(上段の赤円)。持家の有無によって純貯蓄額は異なるが、実質的な純貯蓄額で見ると大きな差はない。
一方、70歳以上では(図表1右上)、純貯蓄額の差が顕著であり、この差がそのまま実質的な純貯蓄額の差となる。70歳以上の大部分が持家を保有していることに加え、年齢を重ねるほど将来住居費差分の影響が減少する(上段と下段が近づく)からだ。では、資産形成における分岐点は何歳ぐらいだろうか。
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11時点でのデータに基づく為、世代間による所得や貯蓄性向の差などは勘案していない。このため、年代間の資産額の差ではなく、同年代内の資産形成の差に着目する。