最新記事

資産形成

【資産形成】40~50代が運命の分かれ道?

2019年3月28日(木)17時46分
高岡 和佳子(ニッセイ基礎研究所)

年収が多くなくても若いときの頑張り次第で老後に十分な生活資産を残すことはできる PeopleImages/iStock.

<相続財産がなくても老後の生活資金を確保できるか否かは、若い時の地道な努力の結果によるところが大きいようだ>

──世帯間の資産形成状況の差を視覚的に把握する

つみたてNISAやiDeCoなど、資産形成に注目が集まる。老後に備え用意すべき金額の目安は2,500 万円といった記事を眼にする機会も多い。資産形成のゴールに関する情報は多いが、各世帯のゴールまでの過程についてはよくわからない。そこで、総務省家計調査報告(2017年平均結果の概要)を参考に、世帯間の資産形成状況の差が何歳頃に拡大するのかについて、視覚的な把握を試みる1

家計調査報告に年齢階級別、純貯蓄現在高五分位階級別の平均純貯蓄額(貯蓄額-負債額)が示されているが、平均純貯蓄額だけでは、資産形成状況の差を把握するには不十分である。資産形成においてマイホームの購入も重要な役割を果たすのに、貯蓄額に持家が含まれないからである。また、持家の有無によって将来の費用も大きく異なるため、純貯蓄現在高五分位階級が等しい世帯を「純貯蓄現在高五分位階級別の持家率」に応じて二分する。この際、同階級内において、住宅を保有しない世帯と住宅を保有する世帯の平均純貯蓄額に差が無いことを仮定している。その上で、「住宅を保有しない世帯が今後住宅を保有する世帯より多く支払う住居費の現在価値の総和(以下、将来住居費差分)」を考慮し、資産形成状況の差を把握する。なお、将来住居費差分は、「持家世帯と民営借家世帯の住居費の差」と「年齢階級別の概算余命」を用いて算出した。

図表1の左上から反時計回りに、年齢階級別の資産形成状況を表示する。各図の上段の円は住宅を保有する世帯、下段の円は住宅を保有しない世帯を表している。上段・下段の複数の円は純貯蓄現在高五分位別の世帯を表しており、最上位を青色、最下位を赤色で表している。横軸が純貯蓄現在高五分位階級別の平均純貯蓄額、上段と下段の距離が将来住居費差分、円の面積の大小は属する世帯数の割合の多寡を表している。左上から右下に向かう3本の点線は、将来住居費差分を加味した実質的な純貯蓄額(平均純貯蓄額-将来住居費差分)が▲2,500万円、0万円、+2,500万円となる水準を示している。

29歳以下では(図表1左上)、大部分の世帯が持家を保有せず純貯蓄額も0万円前後(下段の黄円~水色円)で、2割弱の世帯が持家を保有し多額の住宅ローンを抱えている(上段の赤円)。持家の有無によって純貯蓄額は異なるが、実質的な純貯蓄額で見ると大きな差はない。

takaoka20190317223201.jpg

一方、70歳以上では(図表1右上)、純貯蓄額の差が顕著であり、この差がそのまま実質的な純貯蓄額の差となる。70歳以上の大部分が持家を保有していることに加え、年齢を重ねるほど将来住居費差分の影響が減少する(上段と下段が近づく)からだ。では、資産形成における分岐点は何歳ぐらいだろうか。

――――――――
11時点でのデータに基づく為、世代間による所得や貯蓄性向の差などは勘案していない。このため、年代間の資産額の差ではなく、同年代内の資産形成の差に着目する。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は3日続伸、1000円超高 AI関連株高が

ビジネス

伊藤園、飲料品の一部を来年3月から値上げ お~いお

ワールド

マクロン氏、中国主席と会談 地政学・貿易・環境で協

ビジネス

インド中銀、ルピー安容認へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中