巨大なのはハチだけじゃないインドネシア 奇跡のような昆虫、蝶の楽園も開発乱獲の危機
「蝶の谷」と呼ばれる保護区ですら美しい蝶たちの数が減少していると語るバンティムルン自然保護区の担当者 REUTERS/Ahmed Tawil
<38年ぶりに発見され話題を集めたハチが住む地上の楽園は、危機に直面している>
インドネシア東部北マルク州の島で世界最大といわれる巨大ハチが調査研究チームによって発見され、生存が確認されたことが大きなニュースとなった。学名「メガチリ・プルト(Megachile Pluto)」と呼ばれるオオハキリバチの一種で1858年にイギリスの博物学者アルフレッド・ラッセル・ウォレス氏が最初に発見したことから「ウォレスの巨大ハチ」あるいは「空飛ぶブルドック」の異名でも呼ばれている。
ウォレス氏の報告後、発見の報告が途絶えたため学者の間では絶滅したとみられていた。ところが、1981年に米昆虫学者アダム・メッサー氏が再び発見し、標本を採取したことからその存在が確認された。しかし、この幻の巨大ハチはその後、まったく姿を見せることはなかった。今回は38年ぶりに発見されただけではなく、野生の生きている個体が撮影されたのは史上初の快挙だ。
ウォレス氏が巨大ハチを発見したのは北マルク州南ハルマヘラ県にあるバチャン島のジャングルで、メッサー氏はバチャン島と周辺の小島でも発見したとしている。
今回巨大ハチを発見したのは米テキサスに本部を置く自然環境保護団体「グローバル・ワイドルライフ・コンサーベーション」の調査研究チームの4人。彼らは北マルク州の南ハルマヘラ県などの島々で巨大ハチの調査を行っていたところ、2019年1月25日に発見、確認し、プラスチックの容器に一時的に捕獲して写真と動画を撮影、2月21日に公表した。
調査チームによると今回発見された巨大ハチは雌で、全長3.8cmで羽を広げると約6cmになる大きさという。雄はここまで大きくはならないといわれている。
名前の由来にもなっているウォレス氏(1823~1913)は博物学者と同時に探検家でもあり、インドネシア各地を動植物の探訪旅行で巡り、その興味深い発見などを著書「マレー半島」に記している。彼の功績はインドネシアが生物相の分布で2つの地域に区別される分布境界線を発見、特定したことにある。
バリ島=ロンボク島間の海峡と、カリマンタン島=スラウェシ島間の海峡を南北に結ぶ線がその分布境界線で、俗に「ウォレス線」と呼ばれている。