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監督インタビュー

アカデミー賞作品賞『グリーンブック』のファレリー監督、「差別描写が手ぬるいなんて言わせない」

"Very Aware of the White Savior Trope"

2019年2月27日(水)15時45分
アンナ・メンタ

――白人監督が差別を題材にすれば、当然厳しい目で見られる。

そこは意識した。白人が一方的に黒人を救う話も、黒人が一方的に白人を救う話も手あかが付いてる。そんな型にはまらないようにした。リップはシャーリーを俗世の災難から救い、シャーリーはリップの魂を救う。

現実のひどさを伝え切れていないとの批判は覚悟しているが、説教くさいのは僕の流儀じゃない。さまざまな信条や背景の人に、家族で見てもらえる映画にしたかった。それに映画の冒頭、リップは黒人が使ったコップをゴミ箱に捨てる。差別の描写が手ぬるいなんて言わせない。

――リップの息子が共同脚本だが、シャーリーの子孫は?

消息が分かったのは映画が完成してからだった。でも関係者の試写会には来てもらえたよ。これはあくまでもリップの視点からの物語で、全て真実だと言うつもりはない。でも、シャーリーが司法長官のロバート・F・ケネディに電話で助けを求めたのもカーネギーホールに住んでいたのも、フライドチキンをめぐる2人のやりとりも本当のこと。シャーリーが旅を回想した音声テープも参考にした。

――『Mr.ダマー』と『グリーンブック』には男同士のロードムービーという共通点がある。

どんな物書きにも決まったテーマがある。ジョン・アービングの小説にはどれも熊かレスリングが出てくる。僕は車の旅が大好きで、22回もアメリカを横断している。人生に迷うと、必ず車の旅に出るんだ。

<本誌2019年02月26日号掲載>

※2019年2月26日号(2月19日発売)は「沖縄ラプソディ/Okinawan Rhapsody」特集。基地をめぐる県民投票を前に、この島に生きる人たちの息遣いとささやきに耳をすませる――。ノンフィクションライターの石戸諭氏が15ページの長編ルポを寄稿。沖縄で聴こえてきたのは、自由で多層な狂詩曲だった。

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