女性監督のスリラー映画がいま面白い!
Women Behaving Badly
映画の中で女性が殴ったり殴られたりすると、猛烈な非難が起きることがある。ビアもジョン・ル・カレのスパイ小説『ナイト・マネジャー』をドラマ化したとき、女性の拷問シーンを入れて批判を浴びた。
男性が拷問を受けるシーンなら多くの映画にあふれているから、完全なダブルスタンダードだが、無理もないのかもしれない。映画界では1世紀以上にわたり、男性の監督と脚本家が、映画における女性の描かれ方を定義してきたのだ。
『007』を女性が撮る日
『バード・ボックス』は、原作の映画化が本格的に決まるまで3年以上を要した。それは伝統的な映画会社が、主人公マロリーのキャラクターをいまひとつ理解できなかったからだ。
『クロース』の売り込みに奔走したジューソンも同じような思いをした。『エイリアン』や『キル・ビル』など女性を主人公にして興行的にも成功した映画はあるのに、「『女性映画』は売れないとか、『君のキャリアのプラスにならないよ』と何度も言われた」と言う。
『クロース』が日の目を見たのは、イギリスのウェストエンド・フィルムの女性映画部門ウィラブと、ネットフリックスが手を上げてくれたおかげだ。『ミレニアム』シリーズで国際的な知名度を得たラパスが出演を決めたことも大きかった。
『クロース』が『バード・ボックス』並みのヒットになるかどうかは、まだ分からない。ただ、映画評論家たちの批評がさほど重要ではないのは間違いない。『バード・ボックス』も専門家の評判はそこそこだったが、フタを開けてみれば社会現象的なヒットになった。
これは女性監督や女性中心のアクション映画にとっていい傾向だ。「昔は作品の成功を測る尺度は興行成績と受賞歴しかなかった。その尺度では、『バード・ボックス』は箸にも棒にも掛からない。でも今は社会現象という尺度がある」
それは伝統的なアクション映画の代表格である『007』シリーズにも言えるかもしれない。来年公開のシリーズ25作目の監督候補には、長い間ビアの名前が取り沙汰されてきた。最終的には別の監督に決まったが、その次は分からない。
シリーズ26作目、ボンドが女に泣かされてもいい頃だ。
<本誌2019年02月19日号掲載>
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