最新記事

映画監督

女性監督のスリラー映画がいま面白い!

Women Behaving Badly

2019年2月19日(火)19時00分
メアリー・ケイ・シリング

映画の中で女性が殴ったり殴られたりすると、猛烈な非難が起きることがある。ビアもジョン・ル・カレのスパイ小説『ナイト・マネジャー』をドラマ化したとき、女性の拷問シーンを入れて批判を浴びた。

男性が拷問を受けるシーンなら多くの映画にあふれているから、完全なダブルスタンダードだが、無理もないのかもしれない。映画界では1世紀以上にわたり、男性の監督と脚本家が、映画における女性の描かれ方を定義してきたのだ。

magc190219-women02.jpg

『クロース』の演出をするジューソン Saeed Adyani/NETFLIX

『007』を女性が撮る日

『バード・ボックス』は、原作の映画化が本格的に決まるまで3年以上を要した。それは伝統的な映画会社が、主人公マロリーのキャラクターをいまひとつ理解できなかったからだ。

『クロース』の売り込みに奔走したジューソンも同じような思いをした。『エイリアン』や『キル・ビル』など女性を主人公にして興行的にも成功した映画はあるのに、「『女性映画』は売れないとか、『君のキャリアのプラスにならないよ』と何度も言われた」と言う。

『クロース』が日の目を見たのは、イギリスのウェストエンド・フィルムの女性映画部門ウィラブと、ネットフリックスが手を上げてくれたおかげだ。『ミレニアム』シリーズで国際的な知名度を得たラパスが出演を決めたことも大きかった。

『クロース』が『バード・ボックス』並みのヒットになるかどうかは、まだ分からない。ただ、映画評論家たちの批評がさほど重要ではないのは間違いない。『バード・ボックス』も専門家の評判はそこそこだったが、フタを開けてみれば社会現象的なヒットになった。

これは女性監督や女性中心のアクション映画にとっていい傾向だ。「昔は作品の成功を測る尺度は興行成績と受賞歴しかなかった。その尺度では、『バード・ボックス』は箸にも棒にも掛からない。でも今は社会現象という尺度がある」

それは伝統的なアクション映画の代表格である『007』シリーズにも言えるかもしれない。来年公開のシリーズ25作目の監督候補には、長い間ビアの名前が取り沙汰されてきた。最終的には別の監督に決まったが、その次は分からない。

シリーズ26作目、ボンドが女に泣かされてもいい頃だ。

<本誌2019年02月19日号掲載>

※2019年2月19日号(2月13日発売)は「日本人が知らない 自動運転の現在地」特集。シンガポール、ボストン、アトランタ......。世界に先駆けて「自律走行都市」化へと舵を切る各都市の挑戦をレポート。自家用車と駐車場を消滅させ、暮らしと経済を根本から変える技術の完成が迫っている。MaaSの現状、「全米1位」フォードの転身、アメリカの自動車ブランド・ランキングも。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

EUは米国の関税に報復すべきではない=仏財務相

ビジネス

中国が対抗措置、全ての米国製品に34%の追加関税 

ワールド

トランプ氏とマスク氏ら、仏で有罪判決のルペン氏に支

ビジネス

アングル:長期金利急低下、米関税でパニック買いも 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 6
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 7
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 8
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 9
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中