「黄色いベスト」とともに仏マクロン大統領を悩ます「ベナラ事件」の影
ロシア・コネクション
ベナラ容疑者がデモ参加者に暴行を加えている様子が撮影されたのは5月1日だが、仏メディアがビデオを報じてスキャンダルに発展したのはその2カ月後だった。
当初、ベナラ容疑者は2週間の停職処分を受けたが、エリゼ宮が2カ月も事件を放置したことに批判が高まり、解雇された。
マクロン大統領はスキャンダルを「コップの中の嵐(ささいな事)」と呼び、判断ミスを謝罪。スキャンダルの早期鎮静化を願った。
だが、そうはならなかった。
野党側はエリゼ宮の対応の遅さを批判し、議会による捜査に着手した。
その後、マクロン大統領の側近でもあるコロンブ内相が5月2日に映像の存在を把握していたことが明らかになった。同内相は、議員からの集中砲火を受けて2カ月後に辞任した。
ベナラ事件はその後、さらに規模が拡大している。
エリゼ宮が発行した外交パスポートの使用について捜査を受けたことに加え、上院では解雇後のセキュリティ・コンサルタントとしての仕事についても疑問が呈され、在任中から同様の仕事を請け負っていたかどうかについても調査を受けた。
ベナラ容疑者は11日、ロシアの有力鉱山事業主イスカンダル・マフムドフ氏のことは知らなかったと仏調査報道サイト、メディアパーの報道を否定。同サイトは12月、マフムドフ氏がフランス滞在中の家族の警護を依頼する契約を仏セキュリティ企業と結び、当時エリゼ宮に勤務していたベナラ容疑者が、同契約を仲介したと報じた。
マフムドフ氏の側近と連絡を取ったことがあるか尋ねられたベナラ容疑者は、「以前の同僚や職場、雇用主を通じて、たくさんの人を知っていた」と答えた。
マフムドフ氏側は、コメントの求めに応じなかった。エリゼ宮は、司法の捜査が続いているのでコメントできないとしている。
メディアパー報道を基に、フランス会計院は先週、マフムドフ氏を巡る汚職容疑について捜査を始めたと発表。ただ、現段階ではマフムドフ氏側の不正を示すものはないという。
マクロン大統領の側近で、ベナラ容疑者とも親しかったストラテジストのイスマエル・エメリヤン氏は、3月末での退任を発表。政府高官がまたも辞任に追い込まれた格好だが、エメリヤン氏はベナラ事件との関係を否定した。
一方のマクロン大統領は、「黄色いベスト」運動の勢いをそぐために有権者との対話を続けており、支持率は34%に回復している。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[パリ ロイター]
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