中国経済失速、ハゲタカファンドも苦境に 出資者に返金できず米や牛乳を配る業者も
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金融リスク解消に一役買ってくれる、と中国政府から期待されていた「ハゲタカファンド」は今、資金繰りに窮して信用力を低下させる事態に陥っている。写真は人民元紙幣。北京で2011年3月撮影(2019年 ロイター/David Gray)
不良債権を安値で買って転売して利ざやを稼ぐいわゆる「ハゲタカファンド」は、金融リスク解消に一役買うだろうと中国政府から期待されていた。だが今や、このファンド自体が資金繰りに窮して信用力を低下させる事態に陥ってしまった。
不良債権投資ビジネスが中国で急拡大したのは2016年以降だ。政府の債務圧縮キャンペーンなどで続々と問題債権が供給される中で、外国勢だけでなく国内の新規参入組も相次いで出現した。
ただ昨年、中国経済が28年ぶりの低成長を記録すると、ハゲタカファンド業界も流動性のひっ迫に直面するようになった。
ハゲタカファンドの苦境は、中国の銀行が迅速に不良債権を処理して新規融資の余力を生み出すのを阻むばかりか、多くの個人投資家が不良債権ファンドに出資しているだけに、金融システムにおけるリスクを高めて社会不安を巻き起こしかねない。
PwCのパートナーで中国と香港の債務再編・破綻処理チームを率いるテッド・オズボーン氏は「これまでなら国内の不良債権投資家は新規購入に向けて多額の借り入れが可能だったが、現在ではまったく資金を借りられない」と話す。
不良債権価格の下落は、近年この分野に進出した上場企業のバランスシートを直撃している面もある。
資産管理会社(AMC)と呼ばれる国有の不良債権処理機関でさえ、逆風にさらされている。中国華容資産管理公司は昨年上期に不良債権投資で得た税引き利益が61%も減った。ライバルの中国信達資産管理公司も昨年全体の利益が3割減少したと見込んでいる。減益となれば13年の上場以来初めてだ。
返金の催促
ハゲタカファンドの1つ、浙江東栄股権投資のケースは現在の状況を説明するのにうってつけと言える。
同社は昨年8月に運用していた不良債権資産が焦げ付き始め、不満を募らせる出資者に対して弁済の一環として米や牛乳などを配るはめになっている。不良債権投資に乗り出したのは3年前に中国株が急落した直後。16年3月にはゼネラルマネジャーがロイターに、不良債権投資事業の規模を数百億元に拡大し、年間約13%のリターンを稼ぐつもりだと話していた。足元を見れば、運用資産は90億元弱だが、2万人を超える投資ファンド出資者から返金の催促が続く。
ある出資者は1月に満期を迎えた同社のファンドに200万元を投じていたものの、まだ返金してもらえず「どうしようもない」とため息をついた。
同社の創設者は出資者宛ての書簡で、業界全体が流動性ひっ迫に苦しんでいると説明するとともに、3年以内の返金を約束している。