インドネシア警察、ヘビ押し付けて容疑者取り調べ 背景に少数民族への差別・優越意識
謝罪したものの警察の調査は動画流出の"犯人探し"か
ジャワウィジャヤ県警察のトニー・アナンダ・スワダヤ署長はロイター通信に対し「容疑者の自供を得るための行為だったが適正な方法ではなかった」と謝罪の意を表明する一方、「使用されたヘビは毒のない種類のヘビで、人にも慣れているヘビだった」と弁解、男性に危害を加えるつもりでのヘビ使用ではないことを強調した。
さらに同県警察の上部組織に当たるパプア州警察のアハマッド・ムストファ・カマル報道官は「現在警察の監察部署による内部調査が行われている。もし違法行為が見つかれば相応の措置を取る」と話している。
インドネシア人記者は警察が表向き謝罪して警察官の人権侵害を立件しようとしていることに関し「問題は誰がこうした違法な尋問をしたかではなく、誰がこうした動画を外部に流出させたかであり、その"犯人探し"に躍起となっているのが実状」と警察組織内部の実態を打ち明ける。
パプア州の抱える特殊事情
パプア州は隣接の西パプア州とともに1998年に崩壊するスハルト長期独裁政権時代は、西端のアチェ、南東の東ティモールと並んでインドネシアからの武装独立運動が盛んで国軍は3地域を「軍事作戦地域(DOM)」に指定して内外のマスコミの現地入りを制限していた。その一方で現地に精鋭部隊を派遣して武力鎮圧を続けた結果、「略奪、暴行、拷問、虐殺」などの人権侵害事件が多発、その大半が国際社会の指弾を受けながらも依然未解決あるいは迷宮入りとなっている。
アチェは2004年12月のスマトラ沖地震と津波を経てイスラム法(シャリア)が適用される特別な州としてインドネシアにとどまることを選択、東ティモールは2002年5月に住民投票を経てインドネシアからの独立を果たしている。
結果として旧DOMでパプアだけが細々ではあるものの依然として独立組織「自由パプア運動(OPM)」による独立武装闘争が継続しているという実情がある。
2018年12月2日にはジャヤウィジャヤ県に近いンドゥガ県でインフラ整備の道路建設現場で働くスラウェシ島などからの建設作業員が正体不明の武装集団に襲撃されて19人が殺害される事件も起きている。
増援部隊を派遣した国軍による武装集団の鎮圧作戦が展開中だが、国軍は「武装した犯罪集団」による犯行としているが、実際にはOPMの分派による犯行とみられており、依然として同州山間部の治安が不安定な状態であることが浮き彫りとなった。