最新記事

人権問題

インドネシア警察、ヘビ押し付けて容疑者取り調べ 背景に少数民族への差別・優越意識

2019年2月12日(火)20時10分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ヘビを押し付けられる容疑者の男性 ツイッターにアップされた動画より

<警察の尋問が行き過ぎた背景には、インドネシアが抱える少数民族への差別があったのか?>

インドネシアの東端、ニューギニア島の西に位置するパプア州の山間部にあるジャヤウィジャヤ県で、地元警察が窃盗の容疑で逮捕したパプア人男性の尋問に生きたヘビを使って脅している様子が2月8日にインターネット上の「ツイッター」にアップされ炎上。2月10日に地元警察の責任者が謝罪し、州警察のトップも事実関係の調査に乗り出す事態となっている。

インドネシアでは国家警察や国軍という治安組織による一般市民への人権侵害事件は後を絶たず、少数民族、宗教的少数派のキリスト教徒、さらにLGBTなどの性的少数者に対する行き過ぎた暴力がたびたび明らかになっている。

こうした背景には世界最大のイスラム人口を擁する国という宗教的理由や少数者への「非寛容性」が顕在化している現状、そして多数派の心中に潜在する差別感、優越感があるといわれている。

ヘビの頭を容疑者の顔や口に近づけ尋問

インドネシア各紙などの報道によると、インターネット上に動画が流出、拡散したのはパプア州中心部の山間部にあるジャヤウィジャヤ県警察の取り調べの様子。窃盗容疑で逮捕された男性(名前、年齢不詳)が床に座らされ、両手を後ろ手に縛られた状態で首や身体に全長約2メートルのヘビが巻きつけられている。

動画をみると恐怖のために叫んでヘビから逃れようとする容疑者の男性に対して、警察官とみられる私服男性がヘビの頭部を近づけている。容疑者の怖がる様子に対して周囲からは笑い声とともに、「(ヘビに)キスしろ」「口を開けろ」などの声が飛び、私服の警察官がインドネシア語で「携帯電話を盗んだのは何回だ」と問い詰め、男性が「2回だけだ」と「自供する」様子が収められている。

この虐待された男性は肌の色や頭髪などからパプア人とみられ、私服の男は男性のズボンの裾からヘビを中に潜り込ませようとしている様子も撮影され、すでに8万回近く再生されている。

これは警察官による容疑者の尋問の様子で、パプア州ではこうしたヘビを使った尋問がこれまでも行われていると人権活動家などが指摘していることも地元マスコミは伝えている。

Veronica Koman / Twitter
今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、対ロ追加制裁発表へ トランプ氏就任

ビジネス

ドイツ企業倒産件数、24年第4四半期は金融危機以来

ワールド

ガザ停戦協議で一定の前進、合意まだ=パレスチナ関係

ビジネス

ユーロ圏小売売上高、11月は前月比+0.1% 予想
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国の宇宙軍拡
特集:中国の宇宙軍拡
2025年1月14日号(1/ 7発売)

軍事・民間で宇宙覇権を狙う習近平政権。その静かな第一歩が南米チリから始まった

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 2
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」
  • 4
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 5
    装甲車がロシア兵を轢く決定的瞬間...戦場での衝撃映…
  • 6
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 7
    マクドナルド「多様性目標」を縮小へ...最高裁判決の…
  • 8
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    大河ドラマ『べらぼう』が10倍面白くなる基礎知識! …
  • 1
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵の遺族を待つ運命とは? 手当を受け取るには「秘密保持」が絶対
  • 2
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流行の懸念
  • 3
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分からなくなったペットの姿にネット爆笑【2024年の衝撃記事 5選】
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    早稲田の卒業生はなぜ母校が「難関校」になることを…
  • 7
    ザポリージャ州の「ロシア軍司令部」にHIMARS攻撃...…
  • 8
    仮想通貨が「人類の繁栄と自由のカギ」だというペテ…
  • 9
    青学大・原監督と予選落ち大学の選手たちが見せた奇跡…
  • 10
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 3
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 9
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 10
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中