最新記事

中国

アップル失速は中国経済減衰のせいなのか?

2019年2月8日(金)15時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

インドという「組み立て」候補地も考えているようだが、なんと言ってもクックは習近平の母校である清華大学の経済管理学院顧問委員会のメンバーだ。習近平のお膝元にいる。習近平は華為との関係において、クックを操っている。

では、日本はどうなるのか。

iPhoneのキーパーツである半導体の多くを、中国のiPhone製造工場に輸出している日本としては、iPhoneの売れ行きが不振になると、その半導体も要らなくなるので日本の半導体業界に更なる不況風が吹くことになる。

だから諸悪の根源は「中国の経済減速」としておけば、一応、体裁が保てるという寸法なのだろうか。

春節のビデオメッセージを送った安倍首相

春節の前夜で、大晦日に相当する2月4日、安倍首相は中国語で冒頭挨拶をするというビデオメッセージを送った。

同時に東京タワーが初めて中国共産党の「紅(くれない)の色」に染まり、ライトアップされたのだ。

ああ、何ということだろう――!

なぜ、ここまでして中国に跪かなければならないのか――!

安倍首相は昨年、念願の国賓としての訪中を成し遂げ、習近平国家主席に「一帯一路における協力を強化する」と誓った。中国が一帯一路沿線国の内の発展途上国に代わって人工衛星を打ち上げてあげてGPSなどのメインテナンスも中国がしてあげるという形で実質的な宇宙支配を進めている中、その一帯一路に協力すると誓ったのだ。

そしてこの「紅」のライトアップと中国語祝賀挨拶を交えたビデオメッセージ。

いま習近平国家主席は放っておいても日本に秋波を送ってくる。

アメリカから半導体の中国への輸出を規制された習近平としては、日本に微笑みかける以外にないからだ。トランプが作ってくれた、滅多にないこのチャンスを、安倍首相はわざわざ潰して自ら中国にラブコールを続けるというのは、何ということか。

こういう時にこそ、毅然として、相手が頭を下げてくるのを待つべきなのに、そのチャンスを自らの手で潰してしまったのだ。

1月24日にコラム「日ロ交渉:日本の対ロ対中外交敗北(1992)はもう取り返せない」に書いたように、これは1992年以来の外交敗北以外の何ものでもない。

iPhoneの「風吹けば桶屋が儲かる」の逆パターンが日本の関連業界を直撃したのは、中国経済の減速が最大の原因ではなく、日本の貿易構造と産業構造への反省のなさではないのだろうか。


endo2025.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、関税で米減産計画を一部撤回 メキシコ産高級車

ワールド

米ブラウン大の政府助成金凍結、ハーバード大も制限 

ビジネス

アングル:トランプ関税は「全方位封じ込め」、内需主

ワールド

豪最大の年金基金がハッカー被害、貯蓄引き出し パス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 2
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 3
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 6
    得意げに発表した相互関税はトランプのオウンゴール…
  • 7
    「ネイティブ並み」は目指す必要なし? グローバル…
  • 8
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 9
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中