最新記事

【動画】乳児虐待で警察に捕まった「ベビーヨガ」とは

Russian Parents Arrested After Swinging Baby in Air

2019年2月6日(水)16時34分
カラム・パトン

クアラルンプールの路上で自分の赤ん坊を振り回して逮捕されたロシア人の男 Zayl Chia Abdulla/FACEBOOK

<捕まったのは、今どきのバックパッカー夫婦。自分たちの子供を使った「芸」で小遣いを稼ごうとしたららしい>

マレーシアの首都クアラルンプールで2月4日、路上パフォーマンスを行っていたロシア人の男女2人が逮捕された。赤ん坊の両脚を掴んで逆さにし、乱暴に振り回す男性の動画がネット上で拡散し、虐待だ、と非難が殺到したためだ。

赤ん坊の父親である男性は、妻とともにマレーシア警察に拘束された。

クアラルンプール市警本部のマズラ・ラジム本部長は身柄拘束の理由をAFPに「生後4カ月の娘を虐待した疑い」だと述べた。報道によれば、この夫婦は2月1日にタイからマレーシアに入国した旅行者だという。

フェイスブックに動画を投稿したユーザーの1人、ザイル・チア・アブドゥラは、虐待行為を止めさせたかったと述べた。

逮捕された28歳の男性と27歳の妻の行為を、まだ幼い子どもがケガをする恐れがあった、とアブドゥラは非難した。2月3日のフェイスブックへの投稿には、「この路上パフォーマーは逮捕しなくては! 何とかしてください」と書いていた。

ゆったりしたTシャツに半ズボン、ひげ面で長髪、はだしという格好の父親が、おむつだけをつけた赤ん坊を、自分の脚の間で振り回したり、空中に放り投げたりする様子が確認できる。同じく旅行者とみられる別の3人が、路上に座り込み、背景の音楽に合わせて伝統楽器を演奏する様子も映っている。

この動画が投稿されると、インターネット上で批判の声が巻き起こった。また、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、マレー語で「バカな。よくこんなことができるものだ」と非難する男性の声が入っているという。

今時のバックパッカー文化

一方で、父親の行為はベビーヨガのようだ、と擁護する声もあった。ベビーヨガは、ロシアでは合法ながら、大きな論争を呼んでいるエクササイズだ。幼い子どもを鍛え、発達を促す効用があるといわれる一方、医療専門家からは、ベビーヨガの危険性は、どんな効用よりはるかに大きいと危惧する声が出されている。


ベビーヨガと銘打ったネット動画

サウスチャイナ・モーニングポストによると、今回ロシア人夫婦が逮捕される原因となった路上パフォーマンスは、最近のバックパッカーのトレンドを反映しているという。物乞いをしたり、小物を売ったり、大道芸の真似事をして小銭を稼ぎながら世界を旅することで、「ベグ(物乞い)パッカー」という新語もあるほど。。

「ベグ・パッキング」はマレーシアではとくに違法ではないものの、ソーシャルメディア上ではこれを白人の特権だと批判する声もある。地元住民にはとても手が届かないような海外旅行の費用を、現地住民を搾取してまかなうのはおかしい、というわけだ。

サウスチャイナ・モーニングポストが引用したフェイスブック利用者はこう書いている。「これは現代のヒッピー運動だ。西側の人々は金を持たずに旅行することを『英雄的な行為』と讃えるが、地元の人々から見れば理不尽以外の何物でもない」

(翻訳:ガリレオ)

※2019年2月12日号(2月5日発売)は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集。なぜもめている? 結局どうなる? 分かりにくさばかりが増すブレグジットを超解説。暗雲漂うブレグジットの3つのシナリオとは? 焦点となっている「バックストップ」とは何か。交渉の行く末はどうなるのか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中