ブレグジット秒読み、英EU離脱3つのシナリオ
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2つ目のシナリオは国民投票の再実施。その可能性は大いにあるし、今度こそ国民は残留を選ぶだろうと予想する人もいる。前回の投票結果で株価の下落という痛手を被ったからだ。
だが離脱強硬派のナイジェル・ファラージュは、再投票が実施されても自分の支持者が残留派を圧倒すると自信満々だ。「有権者の決意は固く、さらに大差で離脱が決まる」と本誌に寄稿した(関連記事:メイ首相は「悲惨なほど交渉力なく頑固一徹」 EU離脱混迷の責任は...)。
「敵意の政治」が英国を分断
保守党がメイを解任し、EUとの新たな合意を模索する指導者を選び直すという展開もあり得る。英BBCによれば、メイと対立する保守党議員は再度、党首不信任の投票に持ち込めるだけの署名を集めつつあるという。
しかし最も現実味があるのは、メイがEUを説得し、3月29日の離脱期限を数カ月延長してもらうというシナリオだろう。時間を稼いでEUとの交渉を再開すれば、議会を通しやすい協定案を作成できるかもしれない。英ノッティンガム大学の政治学者クリストファー・スタッフォードも「厄介な問題に関する協定を大幅に変えるにはEUとの協議を再開」するしかないと言う。
メイを悩ませる議会の分断は路上にも広がっている。メイが辛抱強くEUと協定を交渉していたときも、議会の外には連日極右団体が集結し、EU残留派議員に罵声を浴びせていた。12月にはロンドンでイスラム教徒排斥を訴える活動家のトミー・ロビンソンが、極右政党イギリス独立党の支持者数千人を率いてメイ首相への抗議活動を行い、彼女を「売国奴」と罵った。
「これは混じり気のない敵意の政治、ポピュリズムの政治だ」と、英バーミンガム大学の政治学者アレックス・オーテンは嘆く。「ブレグジットは人々を『われわれ』と『彼ら』に二分するメンタリティーを解き放ち、そのメンタリティーがわれわれの民主主義を分断している」
ドイツでも数年前から社会の分断が進んできた。大きな要因はメルケルの難民政策だ。学術誌地球倫理ジャーナルに掲載された論文によれば、賃上げの停滞と雇用不安による生活水準の低下に長く耐えてきた中流層と労働者の多くが、メルケルが難民受け入れに巨費を投じたことに反発した。
そして2015年末の集団暴行事件が決定的に世論の流れを変えた。リークされた警察文書によれば、2000人もの男が1200人の女性を襲い、24人を強姦したという。警察が特定した容疑者120人の約半数が、ドイツに来て日の浅い外国籍の男だった。
この事件を境に難民への感情は急激に悪化し、特に経済の低迷から難民への悪感情が膨らんでいた東部では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢いづいた。2017年9月の連邦議会選挙でAfDは初の国政進出を果たすと同時に第3党に躍り出て、事実上の最大野党となった。