ブレグジット秒読み、英EU離脱3つのシナリオ
Women on the Verge
それまでナチスの歴史を背負うドイツは極右団体の活動に神経をとがらせ、有権者はAfDを公然と支持するのをためらっていた。しかし2017年の選挙後は「ドイツもありきたりの欧州国家になった」と米シンクタンク、ジャーマン・マーシャルファンドのベルリン事務所で副所長を務めるスーダ・デビッド・ウィルプは言う。今やドイツも、移民排斥の極右政党が勢力を伸ばしているという点ではフランスやイタリア、ハンガリーなどと変わらない。
メルケルは中道右派のキリスト教民主同盟(CDU)を率い、2005年から3回の総選挙を快勝に導いてきた。ところが2017年の選挙ではかろうじて勝利したものの連立協議が難航、政権の確立までに半年もかかった。
中道路線の維持は困難だが
2018年10月の地方選ではCDUが大敗し、メルケルは辞意を表明。18年続いた党首の座を直ちに退き、5期目の首相選には立候補しないと発表した。「新しい章を開く時が来た」と、64歳のメルケルは語った。
だがその「時」が来るのはまだ少し先だ。メルケルは2021年の任期満了まで首相を務める意向を示している。そして新しい党首には、自ら後継者に指名したアンネグレート・クランプカレンバウアーが選出された。
ドイツの中道派をテコ入れし、AfDの脅威を跳ね返し、欧州全土を席巻する極右の台頭にあらがうチャンスが、メルケルには残っている。「だが勝つためには、既にメルケル後を見据えているドイツで影響力を維持しなければならない」と、カプチャンは言う。「道が弱体化している今、中道寄りの統治は続けられない。ポピュリズムに引き裂かれつつある欧州を束ねていくことも必要だ」
米独連携を支援する非営利団体「ドイツに関するアメリカ評議会」のスティーブン・ソコル会長によれば、今年実施される2つの選挙がメルケルの評価を決める試金石となる。1つ目はヨーロッパ中の極右政治家が中道政治家と対決する5月の欧州議会選挙。そして秋にはAfDの牙城とされるドイツ東部3州で地方選挙がある。「どちらにもメルケルの信任を問う意味合いがある」とソコルは言う。
メルケルは、ドナルド・トランプ米大統領という脅威にも直面している。防衛費の負担をめぐってNATO加盟国を声高に非難してきたトランプのこと、いつNATOからの離脱に踏み切っても不思議はない。そうなれば70年来の米欧同盟が崩壊する。
米政府高官がニューヨーク・タイムズ紙に語ったところでは、トランプは昨年、再三にわたり離脱の意向を周囲に漏らした。ドイツ以下の加盟国が希望どおりに負担金を増やさなければ、再び脅しをかけるかもしれない。