最新記事

腸内細菌

腸内フローラをAIで解析して実年齢を推定──老化や病気の予測に活用できるかも

2019年2月8日(金)14時30分
島田祥輔

腸内フローラをAIで解析して実年齢を予測できた Dr_Microbe-iStock

<健康な人の腸内フローラを人工知能(AI)で解析して実年齢を予測できた、という研究成果が発表された。腸内フローラと老化の研究は進むのか>

人間の大腸には1000種類、40兆個を超える細菌の集団「腸内細菌叢(腸内フローラ)」が住み着いている。腸内フローラを構成する細菌の種類は年齢によって変わるため、成長や老化と何らかの関係があると考えられている。

しかし、腸内フローラは個人差が大きく、老化との関係を知るにも、何をもって「普通の腸内フローラ」とするのかすら定まっていない。そこで、ある研究グループが、「健康な人の腸内フローラを人工知能(AI)で解析して実年齢を予測できた」と発表した。腸内フローラと老化の研究は進むのか。

腸内フローラは年齢で変わる

「腸内フローラから実年齢を予測できた」ことのインパクトを受け止めるために、前提として「腸内フローラは年齢で変わる」ことを知っておこう。

腸内フローラは、誕生直後から幼児期にかけて劇的に変わり、その後ある程度安定するが、高齢になるとまた変化する傾向にある。リンク先の3ページのグラフがわかりやすい。

shimada0208b.png・日本人における加齢に伴う腸内細菌叢の変化を確認~科学雑誌『BMC microbiology』(5月25日)掲載のご報告~(森永乳業

生まれたては大腸菌や腸球菌という種類の細菌がいるが、わずか数日でビフィズス菌が大半を占めるようになる。母乳やミルクを与えることで、これらに含まれるオリゴ糖を消化できるビフィズス菌が生き残りやすくなるためだ。

そして、離乳が始まって食べるものが大きく変わるとビフィズス菌は減り、やがて「バクテロイデーテス門」と「ファーミキューテス門」という分類に属する細菌がほとんどとなる。この傾向は成人期まで続く。

ところが、60歳を過ぎるころから「プロテオバクテリア門」に属する細菌が増え始める。味覚や咀嚼機能の低下などによって食べるものが変わることが一因と考えられている。

老化と相関する腸内フローラの変化が免疫に影響を与えたり、2型糖尿病や動脈硬化、がん、神経変性疾患など発症につながったりすることが指摘されている。もし、腸内フローラからの予測年齢を「腸年齢」と定義できれば、実年齢の違いを目印に病気の予測や予防に活用できる可能性がある。

しかし、実際には腸内フローラの個人差は非常に大きく、1000種類以上で40兆個を超える腸内フローラの何に注目すれば年齢を予測できるのか、手がかりはほとんどなかった(一言にバクテロイデーテス門と言っても数十種類いる)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中