腸内フローラをAIで解析して実年齢を推定──老化や病気の予測に活用できるかも
4歳以内の誤差で的中できた
今回、「腸内フローラから実年齢を予測できた」と発表したのは、AIを活用して創薬や老化研究に取り組む米国企業「InSilico Medicine社」を中心とするグループだ(Science / News)。
グループは、健常者と何らかの病気の人の腸内フローラを比べた過去の研究データ10個を利用した。これらのデータベースは、他の研究グループが過去に別の研究で作成したものであり、個人が匿名化された上で自由に再利用できる。「オープンデータ」と呼ばれているものだ。
腸内フローラのデータはオーストリア、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、カザフスタン、スペイン、スウェーデン、アメリカに住む20〜90歳の健常者1165名から集められた。
データのうち90%を、AIの一手法であるディープラーニングで解析したところ、最終的に39種類の細菌が年齢予測に重要であることがわかった。
そして、ここで得られたアルゴリズムを使って残り10%の腸内フローラデータから年齢を予測させたところ、4歳以内の誤差で的中できたという。
年齢ではなく地域を予測しているのでは、という指摘も
個人レベルでの予測としてはかなり高い精度だが、この発表は学術雑誌に掲載される前の段階のものなので、これから専門家によるチェック(査読)などを受ける中で何らかの指摘があるかもしれない。
すでにウェブサイトでは、専門家同士がコメントをしている。例えば、中国のデータベースには若年層の登録が多く、ヨーロッパのデータベースには高齢層の登録が多ければ、腸内フローラの予測は年齢ではなく地域の違いを反映しているのではないか、という指摘がある。これは、オープンデータを活用する研究では常につきまとう課題だ。
とはいえ、これを機に腸内フローラからの年齢予測、そして腸内フローラから見る老化の研究がさらに進むことを期待しよう。