日本の「テラハ」が描くリアリティー番組の未来
Reality TV Still Evolving
池添はテラスハウスで自分の性的指向を自覚 (c)Fuji Television/EAST ENTERTAINMENT
<世界的に大ヒット中の『テラスハウス』最新シーズンに、LGBTが登場して分かったリアリティー番組の原点と理想>
日本のリアリティー番組『テラスハウス』が世界的なヒットになっている。米テレビ批評家トロイ・パターソンが、「自然を追うドキュメンタリー番組」に近いと表現するほど「素のまま」なところが、派手な演出に慣れた欧米の視聴者の目には新鮮に映っているらしい。
見ず知らずの男女がひとつ屋根の下で暮らしながら、夢や恋人を見つけていく『テラスハウス』は、12年に日本のフジテレビで放送がスタートし、15年からは動画配信サービスのNetflixが配信を開始。最新シーズンの『TERRACE HOUSE OPENING NEW DOORS』は、17年12月から現在まで放送が続いている。
その新シーズンに、初めてLGBT(性的マイノリティー)のメンバー、池添俊亮(しゅんすけ)が登場した(『テラスハウス』ではシーズン途中に順次メンバーが入れ替わる)。第32話から本格的に登場した池添は、『テラスハウス』に参加した理由を問われて、「自分はバイセクシュアルなのではないかと思う」と仲間に打ち明ける。だが、「まだ自分でもはっきり分からないから、男女6人がいるところに行けば分かるんじゃないかと思った」と語る。
これは日本の主要メディアでは、めったに見ることのない試みだ。というのも日本では、テレビどころか社会一般でも、LGBTを公言する人は極めて少ない。ある研究によると、「友達にLGBTを自認する人がいる」と答えた人は5%しかいなかった(アメリカでは55%)。
フツーのLGBTの姿
日本人が同性愛者を嫌っているというわけではなさそうだ。それどころか20~40歳の70%以上が同性カップルを支持しているという。だが、それならなぜ日本ではLGBTであることを公言している人が少ないのか。
米スキッドモア大学のマサミ・タマガワ教授は、17年に発表した論文「日本でカミングアウトすること」で、「日本社会の基礎は家族制度であり、同性愛嫌いを含め人々が自分の本音を言えるのは家庭だ」と指摘している。このため、社会一般でLGBTは「受け入れられている」ように見えるが、実のところ彼らは無視され、黙らされているにすぎないと指摘する。
日米両方のテレビ番組を見て育ったという日系アメリカ人のコウジの考えは少し違う。「自分の性的指向についての不安を(テレビ番組のような場所で)公然と打ち明けることは、日本に限らずどの国のリアリティー番組でも極めてユニークなのではないか」