「慰安婦」など表記変更しリベラルと訣別? ジャパンタイムズで何が起きているのか
保守派は歓迎、一方で信頼性失ったとの声も
同紙の表現変更について、同研究所は12月上旬、オンライン上に「ジャパンタイムズの英断を支持する」と題するコラムを掲載。その中で「歴史を歪める表現の是正を求め、提言や意見広告を発表してきた国家基本問題研究所は、同紙の英断を全面的に支持する」とした。また、朝日新聞に慰安婦に関する英文記事の表現の変更を求めてきた弁護士のケント・ギルバート氏は、ツイッターなどで「ジャパンタイムズの決断を応援するメッセージを送ってください」と呼びかけた。
一方、ジャパンタイムズの紙面を検証するため、学者らで構成する同紙アドバイザリーボードのメンバーだった佐藤治子大阪大学特任教授(国際政治)は、徴用工と慰安婦に関する記述の変更に関連し、この1年でどのように方針が変わったのかは分からないとしながらも、「クレディビリティー(信頼)を失った。変えなくてもよかった話、それを変えたというのはなぜだろう」と疑問を呈する。そして「政府より右寄りになってしまったということでレピュテーションが変わり、読者も離れる」のではないかと危惧した。
法政大学社会学部メディア社会学科の別府三奈子教授は今回のジャパンタイムズの表現変更に関連し、一部のメディアが政権寄りの報道姿勢に変遷していると指摘。「政権が(メディアを)コントロールしているというより、社内で上の顔を見て、世論の方を見ている、今は言わないでおこう、というトーンダウンが起こっている。ここ数年急に変わった」と話す。また同教授は、こうした流れは国家の論理と経営者の論理が強くなっている「世界的な潮流かもしれない」と話した。
ジャパンタイムズは収益立て直し策の1つとして2013年にニューヨーク・タイムズ(NYT)と提携、自社紙面とNYT国際版の2部構成でのセット販売を開始した。ロイターの取材に対し、NYTの広報担当者はジャパンタイムズが慰安婦や徴用工についての表現を変えたことについて、「両社の編集オペレーションは完全に分離されている。ニューヨーク・タイムズはこの問題について正確な表現を使用しており、今後もその方針は変わらない」としている。
韓国外務省は25日、ジャパンタイムズの表記変更について、「われわれは、日本軍の慰安婦、また徴用工として犠牲となった人たちに関し、一部の日本のメディアが歴史的な事実をねじ曲げる用語を採用したことを残念に思う」と文書でロイターにコメントした。
*韓国外務省のコメントを追加しました。
(宮崎亜巳、斎藤真理 取材協力:Hyonhee Shin(ソウル) 編集:北松克朗)
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