「お得意様」は気づいたら「商売敵」に 中国の猛追へ対策急ぐドイツ
協議は難航か
メルケル独首相は、関税で脅すトランプ大統領流のやり方ではなく、対話を通して問題を解決することを好む。
こうした姿勢から、ショルツ財務相は劉鶴副首相に対して、外国企業に中国市場をさらに開放するよう説得を試みるだろう。
ドイツの保険大手アリアンツ・グループは昨年11月、中国で初めて承認された外国の保険持ち株会社となった。
ショルツ財務相は今回の会談で、中国市場をさらに開放し、公正な貿易環境を整え、米国との緊張を緩和することは、中国自身の利益となると訴えると予想されているが、問題は、中国がこうした見方を共有するかどうかだ。
国内企業への国家的支援と外国企業に対する制限という中国政府の「合わせ技」は、中国メーカーによる国内EV市場支配と、大規模輸出の足がかりを築いた。
課題は独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の計画に見て取れる。同社は向こう数年間でEVに巨額投資を行う。これは、世界の自動車メーカーによる約3000億ドル(約32.5兆円)規模に上る投資増強の一部だが、その半分近くは中国向けだ。
中国の大手メーカー2社と合弁事業を長年行ってきたVWのハーバート・ディエス最高経営責任者(CEO)は、「フォルクスワーゲンの未来は中国市場で決まる」と述べている。
ショルツ財務相は北京滞在中、ドイツが中国や人民元建ての金融商品の欧州拠点となるよう求めるだろう。
銀行が一部の業務をロンドンからフランクフルトに移管する中で、ドイツは英国の欧州連合(EU)離脱からの恩恵を期待している。
ドイツの宿題
一方、ドイツ国内では、「ライバル」としての中国の台頭を受け、自国の知識経済を保護し、先細る輸出を補うために必要な国内需要を刺激するなどの対策が講じられている。
内需主導の成長に向けた転換はドイツにとって大きな変化だ。第2次世界大戦後に起きた「経済の奇跡」は主に輸出によって成し遂げられてきた。
ドイツ政府は先月、欧州域外からの投資家による自国企業への出資を審査し、場合によっては阻止する規制強化を決定した。戦略的分野において、中国人投資家による好ましくない買収を回避する狙いがあるとみられる。
ドイツはまた、輸出で得られた余剰金の一部を国内刺激策や経済のリバランスに充てたいと考えている。
子ども手当は今年増額される予定であり、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)の議員たちは新たな減税を検討している。
メルケル氏から昨年、CDU党首を引き継いだクランプカレンバウアー氏とアルトマイヤー経済相は、景気低迷を阻止する刺激策として、減税を行うべきだと主張している。
「政府が現在、実行もしくは検討している財政措置は、確実に経済を今年後押しするだろう」と、バイエルン州立銀行のステファン・キパー氏は言う。
「国内需要がさらなる輸入増をもたらすなど、一部でリバランスが進行しつつある。ただし、これまで政府が決定した財政措置では、ユーロ圏経済全体を大きく後押しするには不十分だろう」
VPバンクのトーマス・ギツェル氏も同じ意見だ。「今こそ政府が大規模なインフラ支出を行う時だ」と同氏は述べた。
(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)
[ベルリン 15日 ロイター]
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら