最新記事

貿易

「お得意様」は気づいたら「商売敵」に 中国の猛追へ対策急ぐドイツ

2019年1月19日(土)11時18分

1月15日、輸出企業の黄金期が過ぎ去りつつある欧州最大の経済大国ドイツでは、中国における自国の権益を確保すべく急いで対策を講じている。写真は中国とドイツの国旗。北京で昨年5月撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter)

輸出企業の黄金期が過ぎ去りつつある欧州最大の経済大国ドイツでは、中国における自国の権益を確保すべく急いで対策を講じている。だが、顧客からライバルへと「転身」した中国によって自国における変革を余儀なくされている。

近年のドイツ経済成長にとって、中国はなくてはならない存在だった。ドイツ車や、インフラを構築するための工業製品を大量に購入した中国は、世界2位の経済大国へと成長した。

しかし、強いドイツマルクにとって代わったユーロの強力な後押しに支えられたドイツの輸出ブームは、いまや風前のともしびだ。中国はバリューチェーンの上位に上がっており、トランプ大統領が掲げる「米国第一主義」の通商政策の影響を受ける多くのドイツ企業よりも素早く、革新的な施策を導入している。

ドイツでは昨年、輸入が輸出を上回る伸び率となっており、貿易が同国経済の足を引っ張っている。ドイツ連邦統計庁が15日発表した2018年の国内総生産(GDP)速報値は前年比1.5%増で、5年ぶりの低い伸びとなった。

対中輸出は18年1─11月に前年同期比で10%近く増加しているものの、「メイド・イン・ジャーマニー」製品に対する中国の需要は減退しつつある。

「中国におけるドイツ企業の事業展望は陰り始めている」とドイツ商工会議所のボルカー・トレイアー氏は話す。同氏によると、昨年11月の対中輸出はわずか1.4%増にとどまった。

中国経済の減速や、米国の関税問題による不確実性が、ドイツの対中貿易を減退させている。

ドイツ産業界がより強固な対中政策を求める中、特に銀行や保険会社などの自国企業がこれまで以上に中国市場にアクセスできるよう、ショルツ独財務相は今週17─18日に北京を訪れる。

ドイツの政策立案者や経営者は、中国当局が主導する経済モデルによって不利な立場に立たされていると、口をそろえる。

製造業振興策「メイド・イン・チャイナ2025」を掲げる中国は、電気自動車(EV)のようなテクノロジーの自国開発に注力している。同時に、ドイツの産業用ロボット大手クーカなど海外企業の買収により、ノウハウを取得している。

中国の台頭により、世界3位から4位の経済国へと後退したドイツは、中国との「緊密かつ有益な貿易関係」を強調する。

「同時に、われわれは国益に関わるドイツや欧州の企業に対して、これまで以上に外国の国有企業による戦略的買収から保護し、強化していく」と、独経済省の報道官は語った。

異例なことに、有力な経済団体であるドイツ産業連盟(BDI)は先週、欧州連合(EU)に対中政策の厳格化を求めるとともに、企業に対しては中国依存の是正を促した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中