最新記事

人権問題

拘束のサウジ女性は強制送還から一転、難民審査へ 事態急転の背景にタイ軍政の思惑?

2019年1月10日(木)21時20分
大塚智彦(PanAsiaNews)


当初及び腰だったタイ政府の姿勢を批判する現地メディア one31 / YouTube

髪を切っただけで半年軟禁

UNHCRや支援団体、移民当局にクヌンさんが語ったところによると、サウジでは「髪の毛を短く切った、というだけで6カ月も家の自室に軟禁」されるような仕打ちを受けていたという。こうしたサウジ国内の「女性蔑視」といえる現状に嫌気がさして、第三国への亡命を求めてバンコクに到着したという。

タイ当局はまた「クヌンさんは本人の望まない結婚から逃れたいとの思いもあったようだ」としている。

1月9日にはタイのUNHCRはクヌンさんを正当な難民と認定し、オーストラリア政府に対しクヌンさんの定住認定を認めるよう要請。これを受け豪政府移民局もクヌンさんの定住認定に向けた検討を開始したという。

こうした事態の急展開に対し、のサウジ大使館のアブドラ・アル・シュアイビ臨時代理大使は「サウジ政府は(クヌンさんの)パスポートを押収したこともなければ、サウジへの送還を企図したこともない。これはあくまで(クヌンさんの)家族問題であり、その範囲で大使館は関心を抱いているだけである」と述べた。

しかしその一方でシュアイビ臨時代理大使はタイ入管当局者との会談で「タイ当局はクヌンさんの旅券でなく携帯電話を押収するべきだった」と述べ、携帯電話によるツイッター発信が事態を複雑にしたとの認識を示した。

こうしたサウジ側の指摘に対しタイ側は「クヌンさんは犯罪者ではなく、携帯電話を押収する法的根拠はなく、人権侵害にあたる。我われは法に従って行動しているだけだ」(スラチャット移民局長)と主張し、サウジ側に反論した。

クヌンさんを説得するためにサウジから駆けつけた父親に対し、タイ当局はクヌンさんとの面会も拒否、クヌンさんの身柄の安全に万全を期しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ワールド

米、NYマンハッタンの「渋滞税」承認 1月5日から

ワールド

トランプ氏、農務長官にロフラー氏起用の見通し 陣営

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中