最新記事

ブレグジット

英メイ首相、与野党幹部と「新たなEU離脱対応」協議 合意なき離脱は回避できるか?

2019年1月21日(月)10時15分

(3)アイルランド国境問題巡る安全策

首相は、EU加盟国アイルランドと英領北アイルランドの国境問題を巡るバックストップ(安全策)についてEUと合意した。安全策は、国境に検問所などを復活させるのを避け、20年以上にわたって北アイルランドの平和を保ってきた和平合意を尊重するものだ。

安全策を盛り込んだことで、首相は閣外協力していた北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)および、保守党内のEU懐疑派議員の大半の支持を失った。

首相が安全策の撤廃、あるいは変更に成功すれば、DUPと保守党内の多くの批判勢力から支持を取り付けられるかもしれない。しかしアイルランドの利益を守りたいEUは、安全策なしの合意はあり得ないと訴えている。

(4)人の自由な移動

首相は、英国が国境、法律、資金を管理できるような合意案しか認めないとしている。つまりEUからの自由な人の移動と、欧州司法裁判所による司法権の行使、EUに対する加盟費の支払いを止めるということだ。

人の自由な移動を止めるという要求を取り下げれば、EUの単一市場に留まり、ノルウェーのような対EU関係を保つ「穏健な」離脱の道が開かれる。

この案は保守党内の親EU派議員が支持する可能性があり、野党議員の一部からも支持を得られるかもしれない。しかし、これは「真のブレグジット」ではないと訴えている保守党内EU懐疑派の票は失うだろう。

(5)独立した通商政策

首相は、英国は諸外国と自由に自由貿易協定を結べるようにすべきだと訴えている。これは事実上、英国がEU関税同盟に留まったり、EUとの間で新たな恒久的関税同盟を設立する可能性を排除する考え方だ。

この方針を変えれば、野党労働党の要求項目の1つを満たせる。しかし保守党EU懐疑派、その他の一部議員は、英国は自らが影響を行使できないルールに縛られることになるとして反対しており、これら議員の票は失われるだろう。

William James

[ロンドン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中