最新記事

米外交

アメリカはアフリカを中露から取り戻す──ボルトン米大統領補佐官

U.S. Is the ‘Least Imperial’ Great Power in History

2018年12月14日(金)17時00分
クリスティナ・マザ

アメリカは帝国主義度が最も低い超大国、と言うボルトン Kevin Lamarque-REUTERS

<ボルトン米大統領補佐官がトランプ政権のアフリカ新戦略を発表。中国とロシアの経済支援は略奪的と痛烈に批判した>

アメリカは世界史上「最も非帝国主義的な」超大国だと、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は12月13日、米ワシントンを拠点とする保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」での講演で言った。

ボルトンはドナルド・トランプ米政権の新たなアフリカ戦略を発表し、中国とロシアはアメリカとの競争で優位に立つためアフリカに「意図的かつ侵略的に」投資していると批判。西側諸国はその脅威を認識し、今後はアフリカ諸国の経済的自立を促していく必要があると訴えた。

中国とロシアによるアフリカでの政治的・経済的影響力の急拡大に対抗するため、アメリカはアフリカに投資する用意がある、とボルトンは言った。「中国は賄賂や不透明な合意を利用してアフリカ諸国を戦略的に借金漬けにし、隷属状態にしている。中国による投資事業は汚職と腐敗まみれだ」 

中国の融資で大型インフラ投資をしたものの、事業的に成功せず中国への借金だけが残る、という「債務のわな」はつとに有名だ。

「ロシアも法による支配や透明性の高い統治を無視し、アフリカとの政治的・経済的関係を強化している。ロシアは国連での「票集め」と引き換えに、アフリカ諸国に対する武器やエネルギーの売却を続けている。それらの票で政治的影響力を維持し、平和や安全保障を揺るがし、アフリカの民衆の最善の利益に背いている」

中露がアメリカの投資機会を妨害

アフリカ諸国の経済的自立が脅かされているとの懸念に加えて、中国とロシアはアフリカでのアメリカの戦略的利益に脅威を与えていると強調した。

「中国とロシアによる略奪的な経済援助はアフリカの経済成長を阻害し、アフリカ諸国の経済的自立を脅かし、アメリカの投資機会を妨害し、軍事行動に干渉し、国家安全保障上の利益に重大な脅威を突き付けている」と、彼は言った。

アメリカはアフリカでの経済的利益と投資を拡大するため、「プロスパー・アフリカ」と呼ぶアフリカ新戦略を打ち出している。

「アフリカ諸国の指導者に対し、アメリカが示すような高品質で透明性が高く、包括的かつ持続可能な投資プロジェクトを採用するよう促していく」と、ボルトンは言った。アメリカがアフリカに求めるビジョンは「独立、自立、成長」であり、「依存、支配、債務」ではないとも強調した。

ボルトンはさらに、今後数カ月でアメリカはアフリカ諸国と新たな2国間貿易協定を結ぶと約束。

トランプ政権は対外援助予算を数十億ドル削減する計画を立てたが、米議会の強い反対にあい、今年8月に計画を撤回した。

(翻訳:河原里香)

ニューズウィーク日本版 独占取材カンボジア国際詐欺
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月29日号(4月22日発売)は「独占取材 カンボジア国際詐欺」特集。タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中