アフガン介入17年、終わりなき泥沼
War Without End
「大局的に見たらアフガン戦略は失敗する可能性がある。理由はタリバンが勝つからではない」と、今年9月まで国防総省でアフガニスタン部長を務め、現在はランドの政策准研究員であるジェーソン・キャンベルは言う。「彼らはベトコンのような武器や兵力を備えていない。大砲も空軍力も支援もない」
崩壊は国民が完全に政府を見限り、政府の後ろ楯となる外国の軍隊が姿を消したときに起こるのだろう。キャンベルは、外国軍の完全撤退時には最大3万の国民が脱出のために空港に押し寄せ、陸路で隣国に向かうかもしれないと予想する。
ちなみに米軍などの兵士や請負業者、大使館職員はカブールから約50キロのバグラム空軍基地または500キロほど離れたカンダハルを目指し、そこから大型貨物機で中東の親米国やヨーロッパへ脱出する。
国務省の広報担当官は脱出方法の詳細に触れなかったが、「職員を保護し、世界におけるアメリカの使命の遂行で起きるあらゆる不測の事態に対処する努力がされている」と語った。
そうはいっても結果は明らかだ。「タリバンがアフガニスタンを制圧したら......イラクとシリアを苦しめてきたジハード(聖戦)の大勝利になる」とジョーンズ。「聖戦士の一部の故郷だから、その意味は大きい」
ジョーンズによると、ウサマ・ビンラディンの後継者アイマン・アル・ザワヒリが「アフガニスタンに到着したか、既に滞在している」という「証拠」もあるという。
そんな悪夢のようなシナリオを示せば、トランプも米軍の完全撤退を再び断念し、CIAや民間の軍事会社に頼る「深入りしない」方法を選ぶかもしれない。ボブ・ウッドワードの『FEAR 恐怖の男──トランプ政権の真実』(邦訳・日本経済新聞出版社)によれば、CIAは今も約3000人のアフガン戦士を動かしている。
「だからといって反乱軍に勝てるわけではない」と、アフガニスタンでの経験が長い元CIA工作員のアルトゥーロ・ムニョスは本誌に語る。「こんな戦略では勝ち目はない」
現地でCIAを指揮していたケビン・ハルバートも同じ意見だが、少数精鋭の特殊部隊やCIA部隊が残れば最低限の目標を達成できる可能性はあると言う。アルカイダやISIS(自称イスラム国)が「私たちへの攻撃を計画し、兵士を訓練し、テロを実行する基地を作る」のを阻止するという目標だ。「そういう事態だけは避けたい」
アフガニスタンの将来に関しては、タリバンも重要な鍵を握る。「反体制武装勢力の専門家の一致した意見は、とりわけ外国が絡んだ場合は、戦争の泥沼化が武装勢力にとっての勝利となるということだ」と、ジョンソンは言う。「これまでの歴史を見れば、軍隊を送り込む側の国民は、果てしなく続く血みどろの膠着状態は支持しない」
「タリバンはそれを承知だ」と、ジョンソンは言う。「彼らに言わせれば『アメリカ人には時計があるが、こちらには時間がたっぷりある』のだ」
<本誌2018年12月11日号掲載>
※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。
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