最新記事

米軍事

アフガン介入17年、終わりなき泥沼

War Without End

2018年12月11日(火)18時20分
ジェフ・スタイン(ジャーナリスト)

国務省の立場はあくまで、米軍と多国籍軍は勝利しつつあるというものだ。「タリバンは都市部の占領地を維持できていないし、タリバン側の死傷者は多い」と、国務省のある広報担当者は匿名を条件に話した。「政府軍と警察の能力は向上し、全ての州都を掌握している」。だが外部の専門家たちは、タリバンの勢力がここ数年で2万5000人から7万5000人に膨れ上がったと指摘する。「国民の17%の支持もある」と、ジョンソンは言う。「毛沢東なら、明白な勝利だと言うだろう」

公式発表では、昨年半ばの時点で「アフガニスタン政府が支配するのは領土の約60%で、1年前から6ポイントの減少」とされる。今はさらに減ったとジョンソンは言う。それでも、国防総省は完全撤退を正当化する報告書は徹底的に否定するだろうと、同省に近い筋は言う。

アフガニスタンに関して米軍幹部はひたすら強気だと、ある情報将校は語る。「彼らは全て順調だと思っている。彼ら以外は誰でも、時の利はアメリカの側にないと承知しているのだが」。別の専門家も「情勢はカブール政権ではなくタリバンに有利だ」と言う。「情報機関の判断では、この戦争は惨敗だ」

国防総省でアフガニスタン問題を担当した元上級顧問セス・ジョーンズは、「国防総省と情報機関の基本姿勢」はカブールからのいかなる撤退要求も拒否することだと言う。「タリバンが勝利したら何が起こるか」が分かっているからだ。

国務省でアフガニスタンとパキスタンの臨時特別代表を務め、現在はランド研究所の研究員であるローレル・ミラーの意見も同じだ。「軍隊もカネも一気に引き揚げたら政府は崩壊する。これが大方の意見だ」

ただし、政府はそのままで、「アフガン人が独自に事態を解決するだろう」という「少数意見もある」と付け加える。

海軍大学院のジョンソンは「撤退でひどい状況に陥る」と言う。「ガニはテレビで政府は半年で倒れると言ったが、私は6日以内と思う。外国軍がいなければ国防軍はすぐに逃走する。そしてタリバンが、初勝利を収めた96年秋と同じく、銃を全く撃たずにカブールに進軍する」

「ザワヒリがいる」証拠

外国軍の撤退が始まれば、75年4月のサイゴン陥落の光景が再現されるかもしれない。あるいは映画『ブラックホーク・ダウン』の光景(ソマリアの首都モガディシオで多くの米軍兵士が反乱軍に殺害された)だ。

もっとも、一時は最大10万を誇った米軍の規模が何度か縮小された際は何の騒ぎも起きなかった。しかし膨大な資金援助をやめると脅したらパニックになるだろうと、専門家は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国が報復措置、対米関税125%に 引き上げでこれ

ワールド

ガザの医薬品が極端に不足、支援物資搬入阻止で=WH

ビジネス

中国、株式に売り越し上限設定 ヘッジファンドなど対

ビジネス

ステランティス世界出荷、第1四半期は前年比9%減の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた考古学者が「証拠」とみなす「見事な遺物」とは?
  • 4
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 5
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 8
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 9
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 10
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中