「人生100年時代」の暮らし方──どう過ごす?! 定年後の「10万時間」
1―3つの寿命
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1|平均寿命より健康寿命
長寿時代を生き抜くために健康志向が強まることは必然だ。日本では健康増進法に基づき、2000年に『21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)』が始まった。2013年には全面改正が行われ、『健康日本21(第2次)』には健康増進のための基本方向として、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている。
日本人の平均寿命は、2001年から2010年の10年間に男性で1.48年、女性で1.37年延びた一方、健康寿命の延びは男性で1.02年、女性で0.97年にとどまっている。つまり不健康な期間が、男性で0.46年、女性で0.4年長くなっているのだ。そのため『健康日本21(第2次)』では、「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目標にしている。
多くの人は健康に長生きしたいと願っているが、2016年の健康寿命は、男性72.14歳、女性74.79歳。健康寿命と平均寿命との差は、男性8.84年、女性12.35年もある。平均寿命が延びる長寿時代とは、寿命が延びる一方で、介護・看護が必要な期間が長くなり、要介護のリスクが高まる時代でもあるのだ。
2|シニア層の健康志向
最近のフィットネスクラブを覗くと、どこも元気なシニアの人たちであふれている。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、平成29年のフィットネスクラブの売上高は3,330億円、延べ利用者数は2億5,200万人と、増加の一途をたどっている。その背景には長寿化に伴うシニア層の根強い健康志向がある。
厚生労働省の「平成29年国民健康・栄養調査の結果の概要」をみると、運動習慣のある者(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者)の割合は、全体で男性35.9%、女性28.6%だが、年齢階級別では60代の男性が42.9%、女性が29.6%、70歳以上では男性45.8%、女性42.3%にのぼる。男女ともに運動習慣のあるシニア層が多くなっている。
退職後も生き生きと暮らすためには、地域や社会との関係性を維持することが重要だが、定年後に社会的孤立に陥る人も多い。フィットネスクラブに通うシニア層には、身体的な健康だけではなく、ほかの人々との会話やつながりを通じたメンタルヘルスも不可欠だ。むしろそのような効果の方が、長寿時代にはより重要なのかもしれない。
3|重要な主観的健康寿命
幸せに暮らすためには健康寿命を延ばすことが重要だが、「自分が健康であると自覚している期間」(主観的健康寿命)にも留意する必要がある。『健康日本21(第2次)』によると、同期間は客観的健康寿命を下回り、2001年から2010年までの延びは、男性で0.35年、女性で0.37年に過ぎないという。
人が幸せになる条件のひとつとして「健康」を挙げる人は多い。しかし、高齢化が進展すると加齢により健康状態が万全でなくなるのは当然のことだろう。だれもが老化による衰えを経験する時代には、『なにがあっても健康でなければならない』という過度の健康志向に縛られる必要はない。65歳時の健康余命を意識しながらも、上手に「老いること」と向き合うことが大切だろう。
「人生100年時代」を幸せに生きるために、客観的な健康寿命を延ばす努力は当然すべきことだが、同時に超高齢社会では何らかの健康上の制約があっても自らが幸せと思える主観的健康寿命が大切だ。ケガや病気などともうまく付き合い、老化を自然体で受け容れることが重要ではないだろうか。