トランプが中間選挙でやり玉にあげる中米の移民キャラバン 今も米国目指して北上中
1日50キロ
エスコバルさんが、自分のすねをもんでいる。細身で動きが機敏なエスコバルさんは、治安の悪さで知られる故郷の町サンペドロスーラにいた時は、日常的に運動していたという。もっと頑丈な体格の人でも、10月14日にキャラバンに加わって以来エスコバルさんが毎日歩いてきた、1日約50キロの道のりには苦戦したにちがいない。
ラッキーな日には、太陽が昇って猛暑が襲う前に、通りがかった車やバンがエスコバルさんや息子たちを乗せてくれることもある。
主に若い男たちが何十人も速度を落としたトラックの荷台に飛び乗るのを、エスコバルさんの息子たちは目を大きく見開いて見ていた。幼い子ども2人を連れた母親には、無理な行動だ。
エスコバルさん一家は、約12時間前にマパステペクの住民たちが提供してくれた米と豆と卵の夕食を食べて以降、食べ物や水は一切口にしていなかった。
その日の夜は、たくさんの親子連れと一緒に、学校の床の1平方メートルほどのスペースにぎゅうぎゅう詰めになって寝たが、朝食べるものは何もなかった。
それでも、歩道に寝て夜中の雨でびしょ濡れになった大勢の人に比べれば、屋根があっただけましだった。
立候補による交代制の委員会が、起床時間や移動時間、夜間滞在した場所の清掃時間などを決めている。そして、キャラバンは時計のように正確に動いていく。委員会のメンバーは、緑色のジャケットを着ている。
グアテマラからメキシコ南部に至るまで、ほとんどの中継地や道中で一般市民や教会グループや地元団体が支援の手を差し伸べてくれた。
メキシコ入国後は、移民の権利団体「プエブロ・シン・フロンテラス(国境なき人々)」の支援を受けている。同団体は、4月にトランプ氏を怒らせたものも含め、メキシコ国内でこうしたキャラバンの誘導を何年も行ってきた。
当時のトランプ氏のキャラバンに対する怒りは、巨大な「宣伝効果」を生み、中米を脱出したがっている人たちに、キャラバンに参加するのが安全だという印象を植え付けた。エスコバルさんたちの後からも、別のキャラバンができて出発している。