最新記事

ロシア

プーチンがもくろむアフリカ進出作戦

PUTIN'S SAFARI

2018年11月6日(火)15時45分
ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)、オーエン・マシューズ(元モスクワ支局長)

緊密な同盟国でロシア製の武器や軍事技術の長年の買い手であるスーダンでは、もっとうまくやっているようだ。昨年11月には、スーダンのオマル・ハッサン・アフメド・アル・バシル大統領(虐殺や戦争犯罪の容疑で国際刑事裁判所に訴追されている)がモスクワを訪問しプーチンと会談。ロシア製ジェット機や防空システムの購入と、同国の紅海沿岸へのロシア軍基地の誘致に関心があると表明した。

スーダンは「アメリカの攻撃的な行為からの保護」を必要としていると、バシルは主張した。

第2のシリアになる可能性ロシア軍は既にスーダンに入っている可能性もある。昨年12月には親ロシア系新聞の記者アレクサンドル・コチが、スーダンの砂漠で現地の兵士を訓練するロシア人教官とされる動画を投稿した。あるロシアの退役軍人組織は先日、ロシア政府は中央アフリカ、リビア、スーダンの戦闘地域に民間軍事会社を送り込んでいると述べた。

ロシア系の傭兵部隊は、ウクライナやシリアの秘密作戦における暗躍ぶりで悪名高い。その多くはロシア政府と密接な関係を持つ民間軍事会社ワーグナー・グループの傘下にある。

同じような動きは中央アフリカでも報告されている。ロシア外務省によれば、バンギに派遣された175人の教官のうち170人は「民間人の教官」だという。

実際、ロシア系兵士が中央アフリカ北東部で現地の反政府勢力と接触した模様を撮影した動画もある。ダイヤモンドと金が豊富なこの地域は、人権団体から戦争犯罪で非難されている武装グループ、中央アフリカ共和国復興人民戦線(FPRC)が支配している。

フランスの英語ニュース放送フランス24によれば、FPRCの軍事指導者アブドゥライ・ヒセーヌが今年5月、ロシアのトラック18両の車列を停止させ、捜索を行った。その結果、この車列は「ロシア関連の準軍事組織55人」と医療機器のほかに、軍用装備品も運んでいたことが発覚した。この種の物資輸送は「われわれの合意に含まれていない」と、手続きにのっとり軍用品を没収したヒセーヌは主張する。

トラックの車列はその後、反政府勢力の拠点がある激戦地の中部ブリアに向かった。現地で彼らを出迎えたFPRCの高官イブラヒム・アラワドは、「ここでロシア人と会った」と本誌の取材に答えた。「彼らは『人助けがしたい、病院を建てたい』と言う。本当の狙いは分からないが」

ロシアは資源取引を通じたビジネス上の利益も狙っているようだ。昨年11月のフランスの調査ではバンギにある民間軍事会社と、「宝石採掘」に特化した鉱山会社のロシア人経営幹部の結び付きが明らかになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中