最新記事

ロシア

プーチンがもくろむアフリカ進出作戦

PUTIN'S SAFARI

2018年11月6日(火)15時45分
ジャック・ロシュ(ジャーナリスト)、オーエン・マシューズ(元モスクワ支局長)

「ソ連時代のようにあれこれ指図することはできない」と、アフリカ駐在経験のあるロシアの外交官は匿名で語った。「わが国の指導者たちにとってアフリカは、影響力をめぐるアメリカとの戦場だった。ロシア(ソ連)はかつて大物のパトロンだったが、今の政府に同じような資金力はない」

トランプ米政権が国外での外交的・軍事的な活動を縮小する一方で、プーチンのアフリカに対する夢は膨らんでいる。アフリカ諸国の安全保障上のパートナーになることを通して国際的孤立を打破し、イスラム系武装勢力の脅威と戦うとともに、アフリカ大陸の天然資源から利益を得ようというのだ。

エジプトからリビアに空爆?

こうしたロシアの動きは、冷戦後のアフリカの勢力図を変えつつある。例えばNATOは90年代半ばから、モロッコやアルジェリアをはじめとするサハラ砂漠周辺の国々とテロとの戦いのために協力関係を結んできた。だが近年ではこうした国々とロシアとの関係は改善している。

なかでも特記すべきはエジプトとの関係の変化だろう。エジプトは70年代にソ連に背を向け、アラブ世界におけるアメリカの最も緊密な同盟国となった。だがアメリカの影響力が弱まるにつれ、エジプト政府はロシアと接近。エジプトでロシアが原子力発電所を建設したり、ロシア企業が欧州やアフリカに進出する玄関口となる工業地帯を開発する計画が進んでいる。

エジプトはロシア軍機がエジプトの空域や空軍基地を使用することも認める方針だ。つまり、北アフリカにおけるロシアの軍事的プレゼンスは旧ソ連のブレジネフ政権以降最大となる。

隣国のリビア問題でも両国は足並みをそろえており、欧米が支持する暫定政府ではなく、リビア東部を支配しているハリファ・ハフタル将軍を支援している。ロシア軍がリビア国境に近いエジプト西部の空軍基地からハフタルを支援するための空爆を行うことも考えられる。リビアの油田地帯の利権を押さえるとともに、ロシアの超大国としての復活を印象付けるために。

ソ連時代からの同盟国への関与を強め、サハラ砂漠から南にかけて橋頭堡を築きたいとロシアは望んでいる。例えばアンゴラは今、ロシアの影響力拡大の最大の標的となっている。ロシアの国営企業もアンゴラの豊かな天然ガスや石油の資源を狙っている。

重要な協力分野の1つが通信だ。ロシアはアンゴラ初の通信衛星を開発し打ち上げたが、その「動機」には疑いの目が向けられている。ロシア政府と関係があるハッカー集団が、アフリカと中東の商用衛星通信を乗っ取って欧米の政府機関にサイバー攻撃を仕掛ける際の隠れみのにしたとの疑惑がある。

ラブロフは今年3月にアフリカ東部と南部を歴訪したが、訪問先はアンゴラ、エチオピア、モザンビーク、ナミビア、ジンバブエといった旧ソ連時代の同盟国だった。この「復権ツアー」の目的は武器取引の拡大、ダイヤモンド利権、エネルギー開発だ。米外交政策評議会のスティーブン・ブランク上級研究員は、「欧米に対抗するグローバル政策の一環」だと指摘する。

ロシアのアフリカ進出が全て成功しているわけではない。アメリカはアフリカ最大の常設軍事基地を紅海に面する小国ジブチに置き、イエメンとソマリアでの対テロ作戦の拠点にしている。

昨年8月には中国も近くに基地を開設したが、ジブチの外相は「代理戦争の舞台になる」ことは望まないという理由で、国境地帯でのロシアの基地設置を断っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米上院、トランプ氏の対イラン戦争権限制限案を否決 

ビジネス

米経済活動、7地区で緩やかな拡大 見通しは全体に楽

ワールド

トランプ氏、FRB次期議長にウォーシュ氏正式指名 

ワールド

米国防総省、重要鉱物の国内供給強化へ提案要請 イラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    「外国人が増え、犯罪は減った」という現実もあるの…
  • 6
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 7
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    戦術は進化しても戦局が動かない地獄──ロシア・ウク…
  • 10
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 1
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 2
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 5
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 6
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 9
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 10
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中